「ランナーレーティング」の補足解説



ランナーレーティング」についての第2回。


まずは、前回の最後にちょっと触れた、「走るクォーターバック」の扱いについて。


実は、最初は、クォーターバックも混ぜて、全選手で集計していたのですが、
アトランタ・ファルコンズのQBマイケル・ヴィックが、
規定回数にやや足りないながら、結構、良いランナーレーティングだったりしたので、
「ああ、やっぱりヴィックはいいんだなぁ」とか思っていました。


ところが、「あれ?」と思ったのは、
ヴィックに次いでラン回数が多いヒューストン・テキサンズQBデイヴィッド・カーも、
かなり良い値だったんですよね。


いや、カーが「良いランナー」なのかどうかはよく分からないのですが、
あれだけサックを受けているのに、「良いランナー」というのは、どうなんだろうなぁ、と。


・・・と、そこで気が付いたが、その「サックの定義」。


オフェンスラインスタッツ」のときにも触れたことがありましたが、
クォーターバックスクランブルに出て、1ヤードもゲインできなかった場合に、
それは「サック」である、という扱いになるんですよね。


逆に言えば、「サック」ではない場合だけが、クォーターバックの「ラン」になるわけで、
そうなると、「ラン成功率」というもの自体が、意味がなくなってしまいます。
(「ロス」が無いので、平均獲得ヤードも必然的に高くなりますし)


じゃあ、ならば、サックされたときは「ロスヤード」のランだと考えればどうなるか、
と調べてみたところ、全てのランニングバックを下回る値に一気に落ち込みました。
(特にカーなんて、かなり酷いもので・・・)


サックはパス失敗の一種」という考え方が普通ながら、
まあ、上の考え方も納得感はあるので、これを「ラン失敗」としてもよかったのですが、
ヴィックでもそんなに低い値になるんだったら、あんまり意味がないなぁ、と思い、
結局、クォーターバックは対象に含めないことにしました。


まあ、クォーターバックのランには、
オフェンスラインが崩れて追い立てられたのでスクランブルに出た」場合と、
「計画的に、または、とっさの判断で積極的に獲得しにきた」場合があり、
(恐らく、カーは前者が多く、ヴィックは後者が多い)
文字情報ではその判別が付かないので、一概に語るのが難しいのかな、という気がします。


ちなみに、サック回数をラン回数に含めた場合に、
ラン回数が「規定回数」に達したクォーターバックは、ヴィックとカーの2人だけでした。


さて、次に。


レシーバーレーティング」のときと同じように、
値の「目安」を考えてみたいと思います。


規定回数を上回った人数は45人だったので、1チームあたり1.5人弱。
QBレーティングの対象人数が、ほぼ「1チームあたり1人」であることを考えると、
「それよりちょっと多いかな」という感じでしょうか。


値の散らばり方は、QBレーティングと同じような感じ。
値の平均は、QBレーティングより概ね5〜10程度高くなっています。


・・・となると、「目安」も、QBレーティングのものに「+5」〜「+10」すれば、
大体問題ないような気がしてきました。

  • 85.0 NFLにおける平均レベル
  • 95.0 概ねリーグトップ10レベル
  • 105.0 超一流レベル
  • 115.0 歴代5位レベル



「+5」すると、こんな感じ。


ちょっと区切りが悪いので、あんまり良い感じではないのですが、
実際のランキングに照らし合わせてみると、結構ピッタリ当てはまるので、
(「平均」や「トップ10」は、実際はもうちょっとだけ高いんだけども)
とりあえずは、こんな「目安」を提示しておきます。


ただし、これも「レシーバーレーティング」同様、
今後データが溜まってきたら修正するかもしれません。
(「+10」してちょうど良い感じになれば、スッキリするんですけどねぇ)


さて、次も「レシーバーレーティング」のときと同様、
「成功率ベスト10」を見てみましょうか。

順位 選手名 レーティング ラン回 成功回 成功率
1位 RB マイク・アンダーソン
デンバー・ブロンコス
103.7 239 212 88.8
2位 RB ラリー・ジョンソン
カンザスシティ・チーフス
109.1 336 290 86.4
3位 RB エジリン・ジェイムズ
インディアナポリス・コルツ
96.3 360 310 86.2
4位 RB ウォリック・ダン
アトランタ・ファルコンズ
95.6 280 241 86.1
5位 FB デショーン・フォスター
カロライナ・パンサーズ
88.5 206 177 86.0
6位 RB クリントン・ポーティス
ワシントン・レッドスキンズ
94.0 352 299 85.0
6位 RB アントワン・スミス
ニューオリンズ・セインツ
85.7 166 141 85.0
8位 RB リッキー・ウィリアムズ
マイアミ・ドルフィンズ
96.6 168 141 84.0
8位 RB ドマニック・デイヴィス
ヒューストン・テキサンズ
87.3 230 193 84.0
10位 RB ルディ・ジョンソン
シンシナティ・ベンガルズ
96.9 337 282 83.7



全体的に「ラン成功率」は高いので、上位もそんなに飛びぬけて高かったりはしませんが、
そんな中でも、1位のアンダーソンは一歩抜けている感じですね。
ただ、まあ、「それでも9割は超えないんだなぁ」と思わないでもありませんが。


「パスに比べてランは確実」というのは、平均的にはそうなりますが、
そんなに絶対的なものでもないなぁ、と思った次第。


あと、3位のジェイムズは、レシーバーレーティングの「レシーブ成功率」でも1位でした。
ホント、ランでもパスでも信頼の置ける選手ですねぇ。
素晴らしいです。


あれ?
そういえば、ピッツバーグ・スティーラーズRBジェローム・ベティスの名前が無いなぁ。
イメージとしては、「確実に前に出るタイプ」だと思ってましたが、そうではなかったようです。


ところで、「成功率」の定義について、いろいろとご意見をいただきまして、
その中に「3ヤード以上獲得した場合を「成功」としてはどうか」というものがありました。


このこと自体については、「1ヤードも獲得できなかった場合」を「失敗」として、
その「逆」を「成功」とすることが、パスの場合の考え方と釣り合うのではないか、
というのが僕の考えなのですが、
「3ヤード以上獲得率」もなかなか面白い観点だと思いましたので、
ちょっと調べてみました。


以下、そのベスト10。

順位 選手名 レーティング ラン回 3ヤード回 3ヤード率 成功率順
1位 RB リッキー・ウィリアムズ
マイアミ・ドルフィンズ
96.6 168 106 63.1 8位
2位 RB マイク・アンダーソン
デンバー・ブロンコス
103.7 239 148 62.0 1位
3位 RB フランク・ゴア
サンフランシスコ・49ers
94.2 128 79 61.8 16位
4位 RB エジリン・ジェイムズ
インディアナポリス・コルツ
96.3 360 222 61.7 3位
5位 RB ラリー・ジョンソン
カンザスシティ・チーフス
109.1 336 203 60.5 2位
6位 RB ウォリック・ダン
アトランタ・ファルコンズ
95.6 280 168 60.0 4位
7位 RB ドマニック・デイヴィス
ヒューストン・テキサンズ
87.3 230 137 59.6 9位
8位 RB ティキ・バーバー
ニューヨーク・ジャイアンツ
100.8 357 209 58.6 11位
9位 RB クリス・ブラウン
テネシー・タイタンズ
85.7 224 131 58.5 25位
10位 RB ショーン・アレグザンダー
シアトル・シーホークス
109.4 370 216 58.4 28位



1番右の欄は、通常の成功率(1ヤード成功率)での順位です。


いや、非常に嬉しい結果なのですが、ちょっとビックリ。
ウィリアムズ、素晴らしいですねぇ。


昨シーズン、「結構活躍しているなぁ」と感じていたのは、
こういうところにも理由があったのかもしれません。


うん、やっぱり、昨シーズンのウィリアムズは、もっと褒められてもいいはずだ。


アレグザンダーなどは、通常の成功率の順位と、かなり違いが出ていますねぇ。
「ダメなときは多いけど、獲得するときは一気に突き抜ける」って感じでしょうか。


特徴が表れていて、なかなか面白いです。


ちなみに、「逆」のパターンでは、
通常の成功率で6位だったセインツのスミスが、
「3ヤード成功率」は「50.0%」で33位となっていたりします。


こういう選手は、「1・2ヤードしか進まないけども確実に前に出る」ってことなので、
ショートヤード専門要員」としての起用が良さそうな感じですね。


なお、「3ヤード成功率」の平均値は約54%でした。


もう1つ、ご意見から。
フォースダウン成功率を計算に含めてはどうか」というものがありました。


これについては、「シチュエーション(残り時間やダウン数など)を問わない」のが、
能力指標としては良いのではないか、というのが僕の考えですが、
同じように、ちょっと調べてみました。


ただし、「フォースダウン」だけだとあまりにも少なすぎるので、
サードダウンのケースも含めました。(「成功」=「ファーストダウン獲得」)

順位 選手名 レーティング 挑戦回 成功回 成功率順
1位 RB ケヴィン・ジョーンズ
デトロイト・ライオンズ
83.6 7 5 71.5 19位
2位 RB クリントン・ポーティス
ワシントン・レッドスキンズ
94.0 20 13 65.0 6位
3位 RB ジャマール・ルイス
ボルチモア・レイヴンズ
73.4 17 11 64.8 20位
4位 RB メウェルデ・ムーア
ミネソタ・ヴァイキングス
83.8 11 7 63.7 31位
5位 RB ショーン・アレグザンダー
シアトル・シーホークス
109.4 35 22 62.9 28位
6位 RB リッキー・ウィリアムズ
マイアミ・ドルフィンズ
96.6 15 9 60.0 8位
7位 RB ロニー・ブラウン
マイアミ・ドルフィンズ
85.9 19 11 57.9 22位
8位 RB ウォリック・ダン
アトランタ・ファルコンズ
95.6 26 15 57.7 4位
9位 RB マイク・アンダーソン
デンバー・ブロンコス
103.7 33 19 57.6 1位
10位 RB ラモント・ジョーダン
オークランド・レイダーズ
89.6 28 16 57.2 13位



1番右の欄は、先ほどと同様、通常の成功率での順位です。


1位のジョーンズは、「7回中5回成功」と、そもそもの回数が少ないので、
やや参考外かな、と思わないでもないですが、
まあ、他の選手にしてみても、「率を計算するのに十分な回数」とは、
あんまり言えなさそうな感じではありますね。


とりあえずは、参考までに。


ウィリアムズは、ここにも名前が出ていますねぇ。
ダンやアンダーソンとともに、「成功率3部門」(?)全てでベスト10入りです。


お願い、もっとウィリアムズを褒めてやってー。(なぜか思い入れが増している・・・)


以上、「ランナーレーティング」の補足解説でした。


この指標も、「レシーバーレーティング」同様、これでしばらく置いておいて、
今後はまた、別のポジションについて取り上げていきたいと考えています。


なお、「全ポジションの選手に注目する」のための「手がかり(能力指標)」作成、
ということで、現時点の進捗はどんな感じになっているかというと、

と、ここまで揃いました。


ただし、前回も書きましたように、「ランナー」と「レシーバー」は、
ポジション固定の評価方法ではなく、
あくまで「ラン」「レシーブ」をした選手を評価する、ということです。


残るは、クォーターバックとディフェンス選手全般ですが、
クォーターバックについては「QBレーティング」というちょうど良いものがあり、
それを利用すれば良いかな、と考えています。


レシーバーレーティング」と対比させて見るのも面白そうですしね。


クォーターバックの新たな能力指標を考えるのも面白そうですが、
これは、来シーズン以降にしたいと思います。


まあ、そもそもの目的である、
「普段あまり注目しないポジションの選手に注目するため」ということを考えると、
放っておいても注目してしまうクォーターバックについては、
あんまり力を入れなくてもいいかな、とか思ったりもしてますが・・・。


というわけで、残りはディフェンス選手、ということになります。


あ、そうだ、リターナーについては保留(考慮)中でした。
ロングスナッパーについては・・・無理です・・・。


その他のスペシャルチーマーについては、
安定した「スタッツ」が取り出せないので、割愛します。


本日は、こんなところで。