「フィールドゴール失敗のリスク」についての考察



NHKBS1で放映していたNFL第8週マンデーナイトゲーム
ニューイングランド・ペイトリオッツミネソタ・ヴァイキングスの試合の感想を。


ペイトリオッツ、圧勝でしたね。


以上。


・・・いや、まあ、他に言うことは無いです。


ラン中心オフェンスで好調だったペイトリオッツが、
パスばかりで攻めていたのは、「この試合だけ」という気がします。


なんか、来週のインディアナポリス・コルツ戦で、
ランオフェンスを爆発させるための布石だったんじゃないか、
・・・と思うのは、ちょっと穿った見方過ぎますでしょうかね?


まあ、来週の試合を楽しみに待ちましょう。


ところで、話は変わりますが。


ちょっと前から、漠然と考えていたことがありまして。
それは、「フィールドゴール失敗のリスク」について、というもの。


ちょうど、この試合で該当するような場面がありましたので、
ここで、考えをまとめながら、書き記しておきたいと思います。


例えば、こんなケースを想像してください。


第4クォーター残り時間10分に、10点差でリード
オフェンスで敵陣30ヤード地点まで攻め込み、フォースダウン残り10ヤード。


さて、あなたがヘッドコーチならどうしますか?


 1.フィールドゴール
 2.パント
 3.ギャンブル


もちろん、そのチームにどんな選手がいるかによって、
どれを選択するのがベストなのかは、変わってくると思います。


例えば、長距離でもキックが安定していて、50ヤード未満のフィールドゴールなら、
ほぼ100%成功させられるキッカーがいる場合。


敵陣30ヤード地点なら、フィールドゴール距離で「48ヤード」ですから、
ここは、「1.フィールドゴール」を選択するのがベストと言えそうです。


ただし。


現実問題としては、NFLレベルでも、
48ヤードのフィールドゴールを「ほぼ100%成功させられる」なんて言えるキッカーは、
まず、いないと思ったほうがいいでしょう。


参考までに、今シーズンここまでの全キッカーフィールドゴール成績を、
5ヤード区切りでまとめてみますと、

  • 20ヤード未満         9/ 9 成功率100.0%
  • 20ヤード以上25ヤード未満 55/56 成功率 98.2%
  • 25ヤード以上30ヤード未満 51/56 成功率 91.0%
  • 30ヤード以上35ヤード未満 59/67 成功率 88.1%
  • 35ヤード以上40ヤード未満 47/53 成功率 88.7%
  • 40ヤード以上45ヤード未満 61/79 成功率 77.2%
  • 45ヤード以上50ヤード未満 44/63 成功率 69.8%
  • 50ヤード以上        21/48 成功率 43.8%

・・・と、こんな感じ。


大雑把に言ってしまえば、
「48ヤードのフィールドゴールは、3回に1回は失敗する」、と。
成功率は、決して良くはありません。


さて、ここからが「フィールドゴール失敗のリスク」の話ですが、
失敗した場合、もちろん、相手のオフェンスが始まるわけですが、
「敵陣30ヤード地点」で蹴ったからといって、
実は、相手のオフェンスがそこから始まるわけではないんです。


NFLのルールでは、「最後にボールが置かれた位置から」始まることになっています。
つまり、どういうことかというと、
ロングスナッパーがボールを後ろにスナップして、ホールダーがボールをセットした、
「その位置」から、次の相手のオフェンスが始まるのです。


ロングスナップの距離は、約8ヤード。


つまり、「敵陣30ヤード地点」でフィールドゴール挑戦して失敗した場合、
相手のオフェンスは、「38ヤード地点」から始まるわけで。


ここで、キックオフリターンパントリターンの場面を思い浮かべてもらいたいのですが、
リターンで「38ヤード地点」まで返したら、
かなり素晴らしいリターンと言われるのではないでしょうか。


何せ、ここから32ヤード進むだけで、もう敵陣30ヤード地点で、
フィールドゴールが視野に入ってくるわけですから。


そんな素晴らしい位置を相手に与えてしまうのが、
この「フィールドゴール失敗」なのです。
しかも、このシチュエーションでは、実に「3回に1回」という高確率で。


・・・これって、結構恐ろしいことじゃないですか?


先ほど、場面設定として「10点差でリード」というものを書きましたが、
フィールドゴール成功されれば7点差、タッチダウンまでされたら3点差。
勝てそうな試合が、一気に緊迫した状態になってくることが、容易に想像できます。


もちろん、最初に書きましたように、
チームにどんなキッカーがいるかによって状況は変わってくるわけですが、
では、あまり長距離で信頼が置けないキッカーがいた場合に、どうするか。


「2.パント」。
そうですね、その選択が良さそうです。


しかし、実は、敵陣深い位置からのパントというのは、逆に難しい部分もあります。


反則でわざと5ヤード下がってパントする、ということもよく行われますが、
データを見てみると、敵陣35ヤード地点より奥からパントをした場合、
大体、3回に1回はタッチバックになっています。


そうなった場合、現在「敵陣30ヤード地点」で、
次の相手のオフェンスは「20ヤード地点」から始まるわけですから、
パントで稼げる距離は、たったの10ヤード、ということになります。


まあ、もちろん、そうは言っても、「フィールドゴール失敗」の場合と比べれば、
「18ヤード奥に押し込めている」わけですから、それで良しとする考えもあるかな。


というわけで、ここまでの「選択」の結果をまとめてみると、

  • 最高    フィールドゴール成功 (3回に2回の確率)
  • 良い 10 パントで相手陣奥深くに押し込める (3回に2回の確率)
  • 普通 20 パントでタッチバック (3回に1回の確率)
  • 悪い    
  • 最悪 38 フィールドゴール失敗 (3回に1回の確率)

・・・と、こんな感じでしょうか。
(パントで「相手陣奥深く」の幅は広いので、かなり大雑把ではありますが)


「20」とか「38」とかの数字は、相手のオフェンスの開始位置の大体の目安です。


本当は、「最悪中の最悪」なのは、パントリターンタッチダウンされるとか、
スナップミス等で相手にリターンタッチダウンされるとか、
そういう場合なんでしょうが、それこそ稀なことなので、
(特に、この距離のパントでのリターンタッチダウンは、まずあり得ない)
ここでは置いておきます。


どうでしょうか?
単純に「確率」だけで考えるなら、パントをした方が良いように思えてきませんか・・・?


こう考えると、「敵陣30ヤード地点でのフィールドゴール挑戦」が、
実は結構なリスクを含んだ選択である、という気がしてきます。


ところで。


もう1つ、選択肢が残っていました。
「3.ギャンブル」。


いやいや、場面設定は「フォースダウン残り10ヤード」でした。
いくらなんでも、ギャンブルにいくのは無謀でしょう。


・・・本当に?


このシチュエーションでギャンブルにいった場合、多分パスをするでしょうから、
考えられる結果は以下の5パターンかと思います。
(とりあえず、「ファンブルしてリターンタッチダウン」とかは除きます)



ここで、今シーズンここまでのクォーターバックのデータをいくつか並べます。

  • パス成功率 約60%
  • サック率 約7%
  • インターセプト率 約3%
  • 平均パス獲得ヤード 約10.7ヤード
  • 平均サック喪失ヤード 約6.5ヤード



注目してもらいたいのは、平均パス獲得ヤードが10ヤードをやや上回っていることで。
つまり、これもまた大雑把な話となりますが、
「パス成功したらファーストダウン獲得できるかどうかは半々の確率」、
と考えても良いのではないかと。


・・・で、先ほどまとめた「選択の結果」と同じ形式でまとめてみます。

  • 超最高    パス成功でファーストダウン更新 (10回に3回の確率)
  • 良い     
  • 普通  25 パス成功するもファーストダウン更新できず (10回に3回の確率)
  • 悪い  30 パス失敗 (10回に3回の確率)
  • 最悪  36 サック (100回に7回の確率)



なんか、意外に悪くないような気がしません?


「悪い」「最悪」が起こる確率が、大体「3回に1回」になりますから、
確率的には、フィールドゴール失敗と同じ。


しかし、相手のオフェンス開始位置を考えると、
なんと、フィールドゴール失敗した場合の方が悪いことになるんですよ!
これは、なかなか気が付かない事実ではないでしょうか。


ところで、お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、
今まとめたものには、「インターセプト」のケースが入っていません。


これ、どの位置に入ると思います?


別の書き方をします。


パンターが敵陣10ヤード地点にパントを落とす」ことと、
クォーターバックが敵陣10ヤード地点でインターセプトされる」こと、
どちらが簡単だと思いますか?


・・・実は、シチュエーションとしては、パントと同じなんです。
敵陣10ヤード地点あたりに何人ものレシーバーを送り込んで、
そこにめがけて、パスを投げ込めば。


パスが通れば、もちろん「超最高」。
インターセプトされても、すぐにタックルできるようにしておきさえすれば、
それは、「10ヤード地点にパントを落とした」ことと、なんら違いはないんです。


というわけで、僕の考える、このシチュエーションでの「インターセプト」の位置付けは、

・・・こうなります。
(「15」というのは、エンドゾーンまで30ヤードなので、その中間を取って)


作戦さえ間違えなければ、「インターセプト」は、
下手な「パス成功」に勝る結果を残す・・・というわけですね。


では、「選択の結果」を全部をまとめてみます。

  • 超最高    パス成功でファーストダウン更新 (10回に3回の確率)
  • 最高     フィールドゴール成功 (3回に2回の確率)
  • 良い  10 パントで相手陣奥深くに押し込める (3回に2回の確率)
  • 良い  15 インターセプト (100回に3回の確率)
  • 普通  20 パントでタッチバック (3回に1回の確率)
  • 普通  25 パス成功するもファーストダウン更新できず (10回に3回の確率)
  • 悪い  30 パス失敗 (10回に3回の確率)
  • 最悪  36 サック (100回に7回の確率)
  • 最悪  38 フィールドゴール失敗 (3回に1回の確率)



どうでしょうか?
今まで持っていたイメージが変わってきませんか?


ここで、もう1度、お聞きします。


第4クォーター残り時間10分に、10点差でリード
オフェンスで敵陣30ヤード地点まで攻め込み、フォースダウン残り10ヤード。


さて、あなたがヘッドコーチならどうしますか?


 1.フィールドゴール
 2.パント
 3.ギャンブル


もちろん、そのチームにどんな選手がいるかによって、
どれを選択するのがベストなのかは、変わってくると思います。


つまりは、この設問は、
 1.キッカー
 2.パンター
 3.クォーターバック
この中で、このシチュエーションで1番頼れる選手は誰ですか?
・・・ということに、実はなるのかもしれませんね。


なお、ここに書いてきたことは、もちろん、
残り時間が何分で、何点差で勝っているのか(もしくは負けているのか)、
というシチュエーションごとにより、意味合いが変わってくるでしょうから、
あくまでも、「大雑把で全体的な話」と思っておいてください。
(モデルケースは、やっぱり、第4クォーターにそこそこリードしている場合、かな?)


長々と、失礼しました。


ペイトリオッツヴァイキングスの試合の感想に、ちょっとだけ戻ります。


第4クォーター、残り時間約8分30秒。
ペイトリオッツオフェンスが、敵陣32ヤード地点まで攻め込みましたが、
フォースダウン残り5ヤード」になってしまいました。


さて、ここでどうするのがベストでしょうか。


 1.フィールドゴール
 2.パント
 3.ギャンブル


もちろん、「31対7」と大幅にリードしている場面でしたので、
最も安全かつ無難な「パント」という選択肢も良いでしょうが、
クォーターバックに信頼がおけるなら、「ギャンブル」という選択肢は、
実は、「ベストな選択肢」になり得るのではないか、と思うわけです。


解説で、「今のギャンブルの意図が分からない」というようなことを言われていましたが、
決して、「大量リードしているから適当にやっても大丈夫」と思ったわけではなく、
「ベストな選択肢」と考えたのが「ギャンブル」だったのではないでしょうか。


まあ、実際の結果としては、
「最悪」の結果であるサック(しかもファンブルまで!)に終わったわけですが、
結果は結果。
ベストを尽くしても、「最悪」の結果は常に起こり得ますから、致し方ありません。


実は、フィールドゴールに挑戦して失敗した場合と、そんなに変わらない結果なのですが、
とても「同じような結果」には見えないあたり、
「見た目のイメージ」というのは怖いものですね。


今後、是非、「敵陣30ヤード地点」あたりでのフォースダウンにおける選択に、
試合を見ながら注目してみてください。


ギャンブル」は、言うほど「ギャンブル」じゃない場合が、意外と多かったりしますよ。


以上、第8週マンデーナイトゲームの感想・・・というか、
フィールドゴール失敗のリスク」についての考察でした。

勝って順位が落ちることもある



では、最新の「BCSランキング」をチェックしてみます。


 1位(1位→) オハイオ州立大Big Ten) 9勝0敗 <注目>
 2位(2位→) ミシガン大Big Ten) 9勝0敗
 3位(4位↑) 西バージニア大Big East) 7勝0敗 <注目>
 4位(6位↑) フロリダ大SEC) 7勝1敗 <注目>
 5位(8位↑) ルイビル大Big East) 7勝0敗
 6位(5位↓) オーバーン大SEC) 8勝1敗
 7位(7位→) テキサス大Big 12) 8勝1敗
 8位(3位↓) USCPac-10) 6勝1敗 <注目>
 9位(9位→) ノートルダム大独立校) 7勝1敗 <注目>
 10位(10位→) カリフォルニア大Pac-10) 7勝1敗


ベスト10の10校の顔ぶれは変わりませんが、順位は変わりました。


この中で、唯一敗れたUSCが3位から8位にランクダウン。
印象としては、「8位に踏みとどまった」という感じかもしれません。


ノートルダム大より上の順位なのは、ノートルダム大のファンや、
チャーリー・ワイズヘッドコーチにとっては、納得いかないところでしょうね。


ノートルダム大にとって、「8位」と「9位」の間には、
4大ボウル」に出場できるかどうか、とてつもない差があるわけですし・・・。


まあ、どちらにせよ、今シーズンの最終戦USCとの直接対決が用意されていますので、
今の時点でどちらが上でも、あまり関係ないといえば、そうなのですが。


他のチームでは、オーバーン大が、今週勝ったのに順位が下がっています。
対照的に、ルイビル大は、今週試合がなかったのに8位から5位にアップ。


こういうところが、「BCSランキングは分かりにくい!」と言われるところで、
構成一要素であるコンピュータランキングの集計タイミングのずれなどが、
原因の1つであると考えられます。
(実は、コンピュータランキングは、今週の結果を考慮していない・・・はず、確か)


が、まあ、そもそもルイビル大は「無敗校」ですし、
今週オーバーン大は、明らかな格下チーム相手に、ちょっと苦戦していましたから、
結果としては、納得できる形になっているのではないか、とは思います。


さて、11位以下は、主要な動きだけピックアップ。


 14位(15位↑) ボイジー州立大WAC) 8勝0敗 <非>
 18位(19位↑) オクラホマ大Big 12) 6勝2敗 <注目>
 19位(12位↓) クレムソン大ACC) 7勝2敗
 24位(圏外↑) ウェイクフォレスト大ACC) 7勝1敗
 25位(圏外↑) バージニア工科大ACC) 6勝2敗
 圏外(20位↓) ミズーリ大Big 12) 7勝2敗
 圏外(22位↓) ネブラスカ大Big 12) 6勝3敗


「圏外」付近では、「Big 12」カンファレンスの2校が落ちて、
代わりに「ACC」カンファレンスの2校が上がってくるという、面白い動きが。


大幅に落ちたのは、その「圏外」だったバージニア工科大に敗れたクレムソン大
ACC」カンファレンスが、実力拮抗で面白いことになってきました。
(カンファレンス自体のレベルは低く見られていますが)


では次に、各カンファレンスの状況。
今回も、1位が入れ替わったところだけ取り上げて見てみます。


ACC
  ATLANTIC
   ウェイクフォレスト大 3勝1敗(7勝1敗)
   ボストンカレッジ 3勝1敗(7勝1敗)
Big East
   ラトガース大 3勝0敗(8勝0敗)
   西バージニア大 2勝0敗(7勝0敗) <注目>
C-USA
  EAST
   東カロライナ大 3勝2敗(4勝4敗)
   UCF 1勝3敗(2勝6敗) <注目>
MAC
  EAST
   オハイオ大 4勝1敗(6勝3敗)
   アクロン大 1勝3敗(3勝5敗) <注目>
Sun Belt
   中央テネシー州立大 4勝0敗(5勝3敗)
   アーカンソー州立大 3勝1敗(5勝3敗) <注目>


Big East」カンファレンスは、先週、3校が1位で並んでいましたが、
その中で今週唯一試合があったのがラトガース大だった(そして勝った)、
・・・ということになります。


それに加え、アーカンソー州立大が「Sun Belt」カンファレンス首位から転落したことで、
注目しているノートルダム大+「11校」で、現在カンファレンス首位に立っているのは、
SEC」カンファレンス「EAST」ディビジョンのフロリダ大だけになってしまいました。


まだまだ「途中経過」とはいえ、うーん、ちょっと寂しいなぁ。


以上、カレッジフットボール、第9週終了時点の状況でした。