今年の殿堂入り(と、その傾向)
さて、今年の「殿堂入り」について、まとめ終わりましたので、
本日は、その話題を。
先週、殿堂入り発表がありましたが、
それに先立った話から、順を追って見ていきましょう。
まず、昨年の8月23日、「シニアファイナリスト」が発表されました。
今年は、元シカゴ・カーディナルズのRBマーシャル・ゴールドバーグと、
元カンザスシティ・チーフスのCBエミット・トーマス。
もちろん、「シニア」ですから、2人とも昔々の選手なのですが、
特にゴールドバーグは、引退が1949年という、とんでもない古さです。
実は、ゴールドバーグが「シニア」の区分で殿堂入りにノミネートされるのは、
これが2回目のことだったのですが、前回は1979年のことなのですから、
もう、「シニアの中のシニア」(?)と言っても良いくらいの存在ですねぇ。
ちなみに、かなり以前にチラッとだけ書いたことがありましたが、
古い選手が、いきなり「ファイナリスト」に組み込まれる制度が出来たのは、
2004年の殿堂入り選定のときからのことで、まだ5年目。
改めて、この制度について調べてみたのですが、
それ以前は、普通の候補として、毎年1人が選ばれていたようです。
(制度が出来たのは1972年で、1975年だけは対象者なし)
この「1972年〜2003年」の間で、「シニア候補」から殿堂入りしたのは22人。
逆に、「シニア候補」になりながら殿堂入り出来なかったのは9人。
この中の1人が、ゴールドバーグだったわけですね。
もう1つ。
その「殿堂入り出来なかった」9人の内の2人は、後に、もう1度「シニア候補」となり、
そのときに、殿堂入りを果たしています。
というわけで、ゴールドバーグは、史上3人目の「2回シニア候補になった」選手。
過去の例が示すように、ゴールドバーグも、「2回目の正直」となるのでしょうか。
で、2004年分からは制度が変わって、
毎年2人ずつが、いきなり「ファイナリスト」に組み込まれるようになったのですが、
では、それ以降は、その全員が殿堂入りしているのか、というと、そうでもなく。
過去4年間、全8人の中で、ただ1人だけ殿堂入りしていない選手がいました。
ちなみに、その選手は、ダラス・カウボーイズで活躍したワイドレシーバー、
・・・というよりは、「東京オリンピックの金メダリスト」と言った方が通りの良い、
ボブ・ヘイズなのですが、まあ、それはまた別の話。
ここまで、しつこく、「シニアファイナリスト」について書いているのは、
後から関連する話題が出てくるからなので、また、そのときに。
ああ、そうそう。
もう1人の「エミット・トーマス」という名前、
今シーズン中に日記の中で出てきたことがあったのですが、
覚えていらっしゃいますでしょうか。
トーマスは、今シーズン、
アトランタ・ファルコンズでアシスタントヘッドコーチをしていました。
そう。
ボビー・ペトリーノヘッドコーチが、突如シーズン中に辞任した後、
「臨時ヘッドコーチ」となっていた人です。
そうか。
時系列でいけば、「シニアファイナリスト」に選ばれていた方が先だったんだなぁ。
もしかしたら、本人にしてみると、
「おいおい、よりによって今年、こんな事態が起こるのかよ・・・」、
という気分だったかもしれませんねぇ。
さて、「シニアファイナリスト」の話は、これくらいにして、
その1週間後、通常のノミネート者124人が発表されました。
- 2008年殿堂入りノミネート者(クォーターバック編)
- 2008年殿堂入りノミネート者(ランニングバック編)
- 2008年殿堂入りノミネート者(ワイドレシーバー編)
- 2008年殿堂入りノミネート者(タイトエンド編)
- 2008年殿堂入りノミネート者(オフェンスライン編)
- 2008年殿堂入りノミネート者(ディフェンスライン編)
- 2008年殿堂入りノミネート者(ラインバッカー編)
- 2008年殿堂入りノミネート者(ディフェンスバック編)
- 2008年殿堂入りノミネート者(スペシャルチーマー編)
- 2008年殿堂入りノミネート者(ヘッドコーチ編)
- 2008年殿堂入りノミネート者(その他貢献者編)
殿堂入りのノミネート者をチェックし始めて、これが3年目ですが、
過去2年は112人・111人でしたので、今年はちょっと多いですね。
殿堂入りするのは、毎年高々6人(昨年は「シニアファイナリスト」を除くと4人)なので、
当然、このリストに載っている人の多くが「昨年に引き続き」なのですが、
もちろん、「資格取得初年度」で新たに加わった人もいれば、名前が消えてしまった人、
また、昨年は載ってなかったけど一昨年には載っていた人など、様々な人がいます。
そのあたりを、ちょっとまとめてみましょうか。
昨年あり、今年なし | 昨年なし、今年あり | 人数 | |
---|---|---|---|
クォーターバック | バーニー・コーザー ブライアン・サイプ |
ダグ・ウィリアムズ ダニー・ホワイト ブーマー・アサイアソン |
9 |
ランニングバック | グレッグ・プリューイット サーマン・トーマス(殿堂入り済) |
エリック・メトカフ(初年度) オティス・アンダーソン(一昨年あり) |
6 |
ワイドレシーバー | マーク・クレイトン マーク・デューパー マイケル・アーヴィン(殿堂入り済) |
クリス・カーター(初年度) ドワイト・クラーク ハーマン・ムーア(初年度) ロイ・グリーン |
12 |
タイトエンド | スティーヴ・ジョーダン | ジェイ・ノヴァチェク ラス・フランシス(一昨年あり) |
6 |
オフェンスライン | ブルース・マシューズ(殿堂入り済) マーク・ステプノスキー |
ケント・ヒル ジム・ラシェイ トニー・ボセッリ(初年度) マーク・メイ リッチモンド・ウェッブ(初年度) ローマス・ブラウン(初年度) |
19 |
ディフェンスライン | チャールズ・マン デクスター・マンリー |
コルテス・ケネディ(一昨年あり) ジェイコブ・グリーン ジム・ジェフコート レイ・チルドレス |
11 |
ラインバッカー | ジョン・オファーダー | ウィルバー・マーシャル ハーディ・ニッカーソン(初年度) パット・スウィリング マット・ブレア(一昨年あり) リーヴォン・カークランド(初年度) |
17 |
ディフェンスバック | カーネル・レイク デイヴィッド・フルチャー レマー・パリッシュ ロジャー・ウェールリ(殿堂入り済) |
ダレル・グリーン(初年度) ノーラン・クロムウェル |
13 |
スペシャルチーマー | エルバート・シェリー | 5 | |
ヘッドコーチ | ダン・リーヴズ ディック・ヴァミール |
アーニー・ザンピージー | 7 |
その他貢献者 | ジョー・ブラウン ビル・ナン リー・レメル レックス・スチュワート |
アート・マクナリー(一昨年あり) アート・ルーニー ジム・タニー パット・ハガーティ(一昨年あり) ボブ・ハーラン レオ・カーリン |
19 |
全体的に言えば、大体、各区分で1人・2人増えている感じですが、
「ディフェンスバック」と「ヘッドコーチ」の区分だけは、昨年より減。
そして、「オフェンスライン」と「ラインバッカー」の区分が、
それぞれ4人ずつの大幅増となっています。
ちょうどこの2つの区分に、「資格取得初年度」の選手が多かったのが、
大幅増の原因かもしれませんね。
そうそう、「資格取得初年度」といえば。
殿堂入りの資格を得るのは、引退から5年が経過した後のことで、
今年で言えば、「2002年シーズンいっぱいで引退した」選手が「初年度」となります。
ところで、以前、元サンフランシスコ・49ersのWRジェリー・ライスが、
2006年8月に49ersと1日だけ契約して、49ersの一員として引退を発表したときに、
「2006年引退」扱いになるのかどうか・・・というような疑問を書いていました。
ライスは、「2004年シーズンいっぱい」までしかプレーしておらず、
順調に行けば、2010年に殿堂入りするはずなのですが、
もし「2006年引退」扱いになると、それが延びることになるわけですね。
まあ、どちらにせよ、殿堂入りするのは間違いないのですから、
どうでもよい話なのかもしれませんし、そのときになれば分かる話でもあるのですが、
今回、どういう「扱い」になるのかが判明しました。
上の表に「初年度」として入っている元マイアミ・ドルフィンズのTリッチモンド・ウェッブは、
2002年いっぱいまでしかプレーしていなかったのですが、
その後、2005年6月に、ドルフィンズと契約して引退しておりました。
つまり、後から形だけ契約しても、殿堂入りの規定には何も関係ない・・・ということですね。
どうやら、ライスの殿堂入りは2年後で確定の模様です。
さて、他に気になるところを見ていくと、
「スペシャルチーマー」の区分では、一昨年と昨年は顔ぶれが全く同じだったのですが、
今年は、それに1人加わりました。
それから、「ヘッドコーチ」の区分。
昨年、「ヴァミールが早速入っているなぁ」とか書いていたのですが、
今年、早速外れました。
どうも、この区分は、結構なビッグネームが残り続けていて、
殿堂入りするのが難しそうな感じなんですよねぇ。
そんな中、新たに増えたのがザンピージー。
この区分、英語では「Coaches」となっているのですが、
まあ「ヘッドコーチ」で問題なかろう・・・と思っていたら。
ザンピージーは、1度もヘッドコーチになったことがないんですよね。
つまり、アシスタントコーチとしての経歴だけで殿堂入りにノミネートされたわけで。
うーん、これは凄いことだよなぁ。
僕は、この人について、よく知らないのですが、
そういえば、以前、「ヘッドコーチ系統図」について触れたときに、
元ワシントン・レッドスキンズのジョー・ギブズヘッドコーチや、
元オークランド・レイダーズのジョン・マッデンヘッドコーチなどと共に、
「ドン・コリエル系」の一員に並べておりました。
「系統の一員」を調べている中で、代表的な名前として挙がってきたのですから、
当然、ヘッドコーチをしているものだと思っていたのですが、
そうではなかったことで、逆に、凄さを感じるところですねぇ。
今後、殿堂入り出来るかどうか、注目していきたいところです。
・・・と、そんなところかな。
あ、そうそう、あと1つ。
「その他貢献者」の区分で、「アート・ルーニー」という名前がありますが、
元ピッツバーグ・スティーラーズのオーナーであるアート・ルーニーは、
とっくの昔(1964年)に殿堂入りしております。
この「アート・ルーニー」は、その人の孫で、現スティーラーズ社長の方です。
ちなみに、「アート・ルーニーの子供」にして「アート・ルーニーの親」でもある、
現スティーラーズオーナーのダン・ルーニーが殿堂入りしたのは、2000年のこと。
それを考えると、まだまだ殿堂入りには早いような気もしますが、
この調子だと、「親子3代殿堂入り」を、そのうち果たしそうな感じですねぇ。
恐るべし、ルーニー家。
さて。
これらのノミネート者が発表された3ヵ月後。
11月の終わりに、殿堂入りの「セミファイナリスト」が発表されました。
この段階で残っているのは25人。(毎年同じ)
・・・と思ったら、よく見たら今年は26人でした。
どうやら、投票結果で「25位」に2人並んだためのようです。
では、これも、昨年のものと比べてみましょうか。
昨年あり、今年なし | 昨年なし、今年あり | |
---|---|---|
セミファイナリスト | RB サーマン・トーマス(殿堂入り済) WR マイケル・アーヴィン(殿堂入り済) G ブルース・マシューズ(殿堂入り済) CB ロジャー・ウェールリ(殿堂入り済) オーナー アート・モデール |
WR クリス・カーター(初年度) T ジョー・ジャコビー DT コルテス・ケネディ LB リッキー・ジャクソン CB ダレル・グリーン(初年度) ST スティーヴ・タスカー |
いや、まあ、基本的には、非常に分かりやすい状況ですね。
殿堂入りした人の分だけ、新たに補充される・・・といった感じで。
そうなると、「セミファイナリスト」に残り続けることが出来るかどうかが、
殿堂入り出来るかどうかの分かれ道となってきそうです。(一発で殿堂入りする人は別として)
・・・ということは、モデールは・・・?
モデールは、一昨年も昨年も「セミファイナリスト」となっていたので、
本人も、「もう一息」といった気持ちだったかもしれませんが、
これで一気に遠のいてしまったのかもしれませんねぇ。
ちなみに、モデールは、
1961年から1995年まで「旧クリーブランド・ブラウンズ」のオーナーで、
そのチームをボルチモアに移転した人物です。
ボルチモア・レイヴンズのオーナーだったのは、2004年まで。
調べてみたら、まだ在任中の2002年に、「ファイナリスト」まで残っていました。
・・・もう、無理っぽいかも・・・?
あと気づいたたことは、新たに加わったケネディが、
昨年は、ノミネートすらされていなかった、ということで。
こういうケースは、珍しいのかもしれませんね。
さて、そして、年が明けて1月15日。
「ファイナリスト」が発表されました。
これは、「セミファイナリスト」だった25人の中から選ばれた15人と、
それに加え「シニアファイナリスト」2人で、計17人となっています。
では、これも比較。(「シニアファイナリスト」は除きます)
昨年あり、今年なし | 昨年なし、今年あり | |
---|---|---|
ファイナリスト | RB サーマン・トーマス(殿堂入り済) WR マイケル・アーヴィン(殿堂入り済) G ブルース・マシューズ(殿堂入り済) CB ロジャー・ウェールリ(殿堂入り済) |
WR クリス・カーター(初年度) G ランドール・マクダニエル LB ランディ・グレイディシャー CB ダレル・グリーン(初年度) |
ああ、これもまた分かりやすいな。
マクダニエルは、昨年が「資格取得初年度」で「セミファイナリスト」まで残り、
2年目にして初の「ファイナリスト」。
グレイディシャーは、一昨年も昨年も「セミファイナリスト」まで。
調べたところ、2003年に1度「ファイナリスト」に残っており、これが2回目となります。
「ファイナリスト」になった回数を見てみると、
トップは元フィラデルフィア・イーグルスのWRアート・モンクで8回。
次いで、元マイアミ・ドルフィンズのGボブ・キューチェンバーグと、
そして、元ロサンゼルス・レイダーズのPレイ・ガイで、7回となってますね。
・・・こればっかりは、回数が多いことを威張れないのですが。
ちなみに、ガイは、以前にも書いていますように、
結構飛び飛びで「ファイナリスト」入りをしているのですが、
モンクは「8年連続」、キューチェンバーグは「7年連続」の「ファイナリスト」入り。
ここまで「ファイナリスト」となる回数が増えてくると、
「そろそろ殿堂入りできるはず・・・」という気持ちと、
「そろそろ残れなくなってくるんじゃないか・・・」という気持ちが、
どちらも去来して、相当複雑な気分なんでしょうねぇ。
果たして今年は!?
・・・といったところで、先週。
殿堂入り発表がありました。
今年の殿堂入りは、以下の6人です!
モンク、「8度目の正直」でした。
一方、キューチェンバーグとガイは「7度目の正直」ならず。
でも、来年(8度目)に期待でしょう。
ツィマーマンも、ここ3年連続5回目の「ファイナリスト」入りだったので、
こちらも、「ようやく」という気持ちかな。
ディーンとティペットは、その2人に比べると苦労が少ない(?)ですが、
どちらも、昨年に引き続き、2年連続の「ファイナリスト」入りでの殿堂入りでした。
もし、来年殿堂入りするのは誰か・・・ということを予想するならば、
それはやはり、今年「ファイナリスト」に入っている人たちが大本命、
ということになるのでしょうねぇ。
もちろん、グリーンのように、「資格取得初年度」であっさり殿堂入りする人も毎年いますが。
そして、「シニアファイナリスト」からは、トーマスが殿堂入り。
いろいろあった1年ですが、とりあえず、めでたしめでたしですね。
これで6人。
・・・あれ・・・?
ということは・・・?
そう、もう1人の「シニアファイナリスト」、ゴールドバーグは殿堂入りならず。
ありゃま。
これで、「2回シニア候補になりながら殿堂入り出来なかった」初の選手となり、
また、「シニアファイナリストで殿堂入り出来なかった」2人目の選手ともなったわけです。
前回、ゴールドバーグが「シニア候補」となったのは、1979年だったんでしたっけ・・・。
・・・次は、また約30年後でしょうか・・・。
なかなか厳しいですね。
以上。
各選手がどういう活躍をしていたか・・・などということには一切触れず、
今年の殿堂入り選定を追ってみました。
(・・・相変わらず、「変な方向」からマニアックだ・・・)
殿堂入りした6人の方々、おめでとうございます!
8月の式典でのスピーチを、楽しみにしておりますよ。
本日は、こんなところで。