NFLにおける「プレシーズンゲーム」の位置付け



昨日・今日と、いろいろなサイトで、
NFL TOKYO 2005」についての記事を読んだりしているのですが、
どうも、NFLにおける「プレシーズンゲーム」の位置付けについて、
あまり理解されていない方が多いな、と感じました。
(本職のスポーツライターの方でも)


・・・と、偉そうに言えるほどの人間ではないのですが、
そのせいで、昨日の良い試合が貶められるのは耐えられないので、
ここにちょっと記しておきます。


例えば、野球などは、1シーズンで100試合以上ものレギュラー試合があり、
その年の「チャンピオン」になることに対して、
「ある1試合」の占める割合(重要度)というのは、
それほど大きいものではありません。
(もちろん、「全く大事ではない」と言っているわけではありませんよ)


ですので、「負けても得るものがある」ということであれば、
いわゆる「捨て試合」があっても良いのです。
例えば、若手に試合経験を積ませるとか、
新たな戦術を試してみる、だとか。


ところが、NFLでは、レギュラーシーズンの試合は16試合しかありません。
ある1試合の結果が、そのままスーパーボウルの結果につながっていきます。


「結局プレーオフはトーナメントなんだから、1試合くらい関係ないのでは?」
という考えもあるかとは思いますが、
NFLにおける、歴然とした「ホームフィールドアドバンテージ」を考えると、
(気分的な問題ではなく、データとしても、その傾向ははっきりしています)
AFCNFCの1位でプレーオフに進出するのと、
2位・3位、またワイルドカードで出場するのでは、
それぞれに、天と地ほどの差があります。


そう考えると、「1勝の差」は非常に大きいものとなりますので、
「そのままスーパーボウルの結果につながる」と言うのは、
決して過言ではないと思います。


そんな中での、「プレシーズンゲーム」の位置付けです。


先ほどと対照的に、ここでの結果は、
スーパーボウルを制覇する上で、勝とうが負けようが「まったく」関係ありません。


ということは、若手に試合経験を積ませたり、
新たな戦術を試したり、ということが出来ます。
・・・というより、ここでしか出来ないわけです。


また、アメフトというのは、よく「準備のスポーツ」と言われるわけですが、
試合前の準備も大事であり、また、
シーズン前の準備も、非常に大事なものとなってきます。


その準備を試せる「実戦」、つまり、プレシーズンゲームも、
たったの4試合(例外でも5試合)しかありません。
いわば、非常に貴重な「捨て試合」なのです。


ですので、プレシーズンに全力で勝利を目指して戦うことは、あり得ません。
そんなことをしていたら、スーパーボウルなんて、夢のまた夢です。


昨日、インディアナポリス・コルツQBペイトン・マニングや、
アトランタ・ファルコンズQBマイケル・ヴィックが、
ほぼ第1クォーターのみで引っ込んだことについて、
「顔見せ程度にしか出てこないのか」と書かれているところもありましたが、
別に、日本でやっているから、それだけしか出てこないわけではないのです。
アメリカに帰っての来週からのゲームだって、まったく同じです。


むしろ、日本のファンのために、
「期待通りに」パスでタッチダウンを目指したマニングと、
怪我の恐れのあるランを「期待通りに」出したヴィックは、
素晴らしいサービスをしたと思います。
(特にヴィックは、本当は走りたくなかっただろうに)


大体、スター選手がいなくたって、
そもそも「アメリカンフットボール」というスポーツは面白いスポーツであり、
日本国内の試合だって面白いのだから、最高峰の選手たちが戦っている試合は、
名も知らぬ控え選手が出ていたって面白いものになります。
(というか、面白いものになってました)


昨日の観戦記で、「プレシーズンゲーム」として大満足、と書いたのは、
そういうわけです。


僕も、出来れば、レギュラーシーズンゲーム(真剣勝負)を、
日本で見られれば、それに越したことは無いと思いますけどね。


ただ、昨日のスタンドには、空席が結構目立ちました。
確かに、「45000人も」動員したというのは、
昨今のプロ野球の試合と良い勝負で、素晴らしい数字だとは思いますが、
満員になるくらいでなければ、
それこそ、「年間16試合しかない」うちの1試合を、
海外で行おうなんて、もったいなくて出来ないでしょう。


ちなみに今年は、メキシコで初めてレギュラーシーズンゲームが行われますが、
おそらく満員(90000人以上)になると思います。


最近は、「アイシールド21」の影響でアメフト人気が出てきていますから、
満員になるんじゃないかと、ちょっと期待していたんですけどね・・・。
・・・まだまだ、それほどではありませんでした。


いつか、レギュラーシーズンゲームが日本で行われる日が来るくらい、
アメフトの人気が出るといいなぁ、と願っております。