BCSランキングとBCS全米選手権について
カレッジフットボールの仕組みについて、昨日の続きです。
で、まあ、歴史的にもいろいろありまして、カレッジスポーツの枠を超えて、
アメリカの中で、確固たる地位を築いたカレッジフットボール。
実は、NFLよりもカレッジの方が人気がある、という話もあります。
そうやって、全米で盛んになればなるほど、出てくるのは、
「どの大学が一番強いか」という話題。
(もちろん、みんな、地元のチームが一番強い、と思うわけですが)
ところが、これがなかなか難しい問題で。
昨日も書きましたが、「NCAA 1-A」という最高レベルのディビジョンだけでも、
117校もの大学が存在します。
そして、レギュラーシーズンは11試合か12試合しかありません。
対戦しないチームがほとんどです。
例えば、無敗チームが1敗チームより強いか、というようなときに、
「いやいや、(無敗チームは)強いチームとあたっていないからだよ」、
ということが言えるケースも、それだけ多くなるわけです。
試合数を増やしたり、レギュラーシーズンを伸ばしたり、というのは、
アメフトというスポーツの特性(1週間に1試合が精一杯)や、
「学生スポーツ」という面から、難しいところ。
(学業で一定の成績を残さないと出場資格を失う、ということもあったり)
ちなみに、「じゃあ、プレーオフでトーナメントでもすれば良いじゃないか」、
ということを思われる方もいるかもしれませんが、
まさに、今、アメリカでは論争が巻き起こっている部分ですので、
また、これについては、いつか取り上げることになると思います。
とりあえず、過去の時点では、「ボウルゲーム」という「伝統」を継続して、
その中で、どうやって「全米ナンバー1」を決めようか、という流れでした。
で、結局、対戦成績だけでは判断できないので、
人の手で、ランキングが作られていくことになります。
この日記でも、たびたび紹介していますように、
NFLでも「パワーランキング」というものを各メディアなどが発表していますが、
あれと同じようなものです。
NFLでは、あくまで参考程度のものですが、カレッジでは重要度が違いますから、
様々な方法で、「精度」を上げる工夫がされてきました。
そのうちに、もっとも権威があって信憑性が高いものとして、
「AP通信」の記者投票に基づくランキングと、
「USAトゥデー/ESPN」によるコーチ投票に基づくランキングが出てきます。
ここで「ナンバー1」と認められた大学が、全米ナンバー1であると、
大体誰もが思うようにはなってきました。
ただし、そこは人が決めるもの。
2つの権威あるランキングでも、食い違うことは出てきます。
そうなると、「もっとすっきりとナンバー1を決めることは出来ないものか」、
ということになってきます。
そこで出てきたのが、「BCS」という構想。
「BCS」というのは、「Bowl Championship Series」の略なのですが、
簡単に言うと、毎年、ある1つのボウルゲームを「ナンバー1決定戦」とし、
そこで勝ったチームを「全米ナンバー1」としようじゃないか、というものです。
では、その試合に出場できるチームは、どうやって決めるのか、
ということで出来たのが、「BCSランキング」。
これは、AP通信とUSAトゥデー/ESPNのランキングを主軸に、
いくつものコンピューターランキングや日程難易度などを組み合わせて、
1つのランキングとしよう、という試みです。
このランキングで、レギュラーシーズン終了時に1位と2位になったチームが、
そのナンバー1決定戦「BCS全米選手権」に出場できることになります。
ところで、先ほど「ある1つのボウルゲームを」と書きましたが、
じゃあ、どのボウルゲームが「BCS全米選手権」になるかというと、
これは、4つのボウルゲームの持ち回りで行われることになりました。
3シーズン前はフィエスタボウル、2シーズン前はシュガーボウル、
昨シーズンはオレンジボウル、そして、今シーズンはローズボウルが、
「BCS全米選手権」として行われています。
これが、昨日紹介した、「(現代の)4大ボウル」ということになります。
歴史的な「4大ボウル」の1つであるコットンボウルではなく、
フィエスタボウルが入っているのは、テレビ放映権の問題だそうで。
まあ、「BCS」なんてのは、歴史の浅いものですから、
恐らく古くからのファンは、フィエスタボウルを「4大ボウル」の1つとは、
認めてないんじゃないかとは思いますが。
ともあれ、この8年間、この仕組みが続いてきました。
実は、この間、本当に「すっきりとナンバー1」が決まってきたかというと、
そうでもなかったりします。
その原因の1つは、「BCSランキングが完璧ではない」ということ。
細かく調整が繰り返されていますが、
完璧なランキングなんてものは、そもそも作りようが無いものです。
そして、もう1つの原因は、「BCS全米選手権」はあくまで参考試合で、
正式な「全米ナンバー1」は、その試合翌日に投票が行われる、
AP通信とUSAトゥデー/ESPNのランキングで決まる、ということ。
一昨年のシーズンは、それが一気に吹き出た感じで。
当時、僕はまだカレッジの仕組みもよく分からずに、
ニュースを軽く追っていただけでしたが、その「混乱ぶり」は伝わってきました。
この年、レギュラーシーズンで無敗チームは1チームもなく、
有力カンファレンスの中では、1敗で3チームが並んでいました。
USCとLSUとオクラホマ大です。
で、AP通信とUSAトゥデー/ESPNのランキングでは、
この中で、どのチームが1番強いと思われていたかというと、USCでした。
次いでLSUで、オクラホマ大は3番手。
2つのランキングに、食い違いはありません。
ところが、これを、BCSランキングの計算にかけてみると、
1位オクラホマ大、2位LSU、3位USCという結果に。
これは、当時、BCSランキングの計算に「日程難易度」が入っていたため、
「日程がより厳しかった」と判断されたオクラホマ大に有利に働いたのです。
(日程難易度は、その後、計算に入れられないようになります)
最終的に1位と2位になったチームが試合をするのが「BCS全米選手権」ですから、
この時点で、3位のUSCには、それに挑むことすら出来なくなってしまいます。
多くの人が「1番強い」と思っているのに。
それでも、「BCS全米選手権」(この年はシュガーボウル)でオクラホマ大が勝てば、
まあ、BCSランキングでも1位だったことだし、
オクラホマ大が「全米ナンバー1」ということで納得できるかな、
と思われていたのですが、勝ったのはLSU。
USCは、ローズボウルに出場していたのですが、こちらは当然のように楽勝。
そうなると、「いや、そもそもLSUよりUSCの方が強いと思っていたし」、
という声が出てくるのも、やむをえないところでしょう。
で、翌日の投票。
USAトゥデー/ESPNのコーチ投票では、
「基本的にBCS全米選手権の勝者を1位にする」という申し合わせがあったため、
LSUが「全米ナンバー1」ということになりますが、
(それでも「造反票」があったりしてます)
AP通信の記者投票では、USCが1位に。
こうして、この年は、2チームが「全米ナンバー1」になってしまいました。
それでも、「BCS」という仕組みに権威があれば、
「LSUがナンバー1」で良いはずなのですが、そうではないのが実情。
実は今シーズン、NFLのニューイングランド・ペイトリオッツ同様、
「USCの3連覇(スリーピート)なるか」と、しきりに言われていたりするのですが、
BCSの結果だけ見ていると、「何で3連覇?」ということになってしまうわけです。
そんなこんなで、すったもんだに嫌気がさした(と思われる)AP通信は、
BCSに自分たちのランキングを利用しないでくれ、ということを申し出まして。
今年は、新たに「ハリスインタラクティブ社」が投票制でランキングを作成し、
それがBCSランキングに組み込まれて・・・といった大きな変化がある中で、
BCSの8年目のシーズンが行われています。
ところで、8年ですから、この間に4つのボウルゲームがちょうど2回り。
当初より、2回りしたら、この仕組みを見直す、ということになっていたようで、
実は、今シーズンは、その節目だったりします。
まあ、そんな状況だからこそ、最初のほうに書いたように、
「プレーオフ論争」が巻き起こっていたりするんですけどね。
で、ここまで長々と説明しておきながら何ですが、
この仕組みは、恐らく「今シーズンまで」です。
・・・といっても、「BCS」という仕組み自体は続くことになっているようです。
まあ、今から来シーズンの話をしてもしょうがないので、
この話はまた、いずれ。
といったところで、今年の「BCS全米選手権」である「ローズボウル」の、
USC対テキサス大の試合が注目される、ということに、
話がつながっていくわけですね。
以上、駆け足でカレッジフットボールの仕組みをざっとまとめてみました。
自分なりに噛み砕いてはみたのですが、分かりやすかったでしょうか?
そうであれば幸いです。