「新労使協定」の裏事情を邪推
では、昨日の予告どおり、「NFL本体」の話を。
労使交渉が終了しました。
とにもかくにも、新労使協定が合意に至ったことは嬉しいことで。
「サラリーキャップ制度廃止」という事態にならなくて、本当によかったです。
ただ、現時点で、いまいち腑に落ちない点などもありまして。
まだ、新労使協定の内容について、詳細は伝わってきていないのですが、
これまでに出た記事などを基に、いろいろと裏事情などを「邪推」してみたいと思います。
最初に断っておきますが、ほぼ全て「憶測」ですので。
正しい情報は、今後発表されるであろうものをお待ちくださいませ。
ちなみに、新労使協定では、「給与改定」が行われただけでなく、
そのほかにも、いくつかの規定の変更が承認されているようです。
今後のオフシーズンの契約日程(交渉期限とか)は既に発表されていますが、
もしかしたら、そのあたりの変更もあるかもしれませんね。
で、まあ、問題となっていた「給与改定」。
今回、選手会側が求めていた、「計算の基となる収益範囲の拡大」について、
これは概ね認められたようなのですが、
問題は、どのようにオーナー側に受け入れられたか、ということで。
実は、合意の1・2日前の情報に、
「広告収益」や「地方ラジオ放送契約の収益」からの各チームの負担割合は、
高収益チームにとっては10%程度なのに対し、
低収益チームにとっては50%にもなってしまうので、そこが合意できない点、
というものがありました。
なんでそうなるの?
・・・というのが、そもそもの疑問点でして。
当然、全チームが同じ割合を負担するものだと思っていましたので。
ただ、よくよく考えてみると、選手会側が求めていたのは、
「NFLの全収益の60%(最終的には59.5%?)」というだけであって、
その中身については、言及していなかったんですね。
全チームが同じ割合で、とも言っていないわけですし、
従来のチケット収益等からの負担割合と、拡大される広告収益からの負担割合が、
同じ割合で、とも言っていないわけで。
そこは、オーナーたちで話し合って決めてくれ、と。
で、例えば、高収益チームの広告収益が低収益チームの10倍あったりすると、
「いやいや、うちは営業努力でこれだけ結果を出せているのであって、
同じ割合を負担するのは、不公平なんじゃないか?」
・・・という声が、高収益チームから挙がったのではないでしょうか。
そして、恐らくその結果の「提案」が、「10%」と「50%」。
多分、それでも、金額にすると、高収益チームの方が圧倒的に高くなるのでしょう。
ただ、低収益チームにとっては、額が少なかろうがなんだろうが、
「今までの儲けの半分も持ってかれたら経営が成り立たないよ!」、
ということになるのは、頷けるところです。
さて、そんなこんなで、合意に至らなかった「オーナー間交渉」ですが、
なんとか打開せねば、ということで、
昨日、新たな提案がなされたそうです。
それによると、広告等の収益の「最も多い5チーム」が最も高い負担をし、
次の5チームがそれよりも少ない負担をし、
次の5チームがそれよりも少ない負担をし、
残りの17チームは負担なし、ということになるそうで。
・・・というのを、文面どおりに解釈すれば、
「おお、高収益チームがよく譲歩したなぁ」というところですが・・・。
結局、この提案が30対2で可決されて、合意に至ったのですが、
その「反対2票」は、「低収益チーム」である、
バッファロー・ビルズとシンシナティ・ベンガルズ。
なんで・・・?
だって、低収益チームにとっては、全く悪い話ではないはずですよねぇ。
ちなみに、この案は、提案されてから45分後に採決が獲られたようなのですが、
ビルズのラルフ・ウィルソンオーナーによると、
「45分では内容が理解できなかった」から反対したのだそうです。
・・・と、いうことは、ですよ。
単純に、「高収益チームが多く負担して、低収益チームは負担しなくていいですよ」、
という内容だったのではなく、
それだけ、「ややこしい内容だった」ということではないでしょうか。
ちょっと、きな臭い話だなぁ、と思うのは、
この提案が、「高収益チーム」が9チーム集まってまとめた案、というところで。
あれだけ、負担増を嫌っていた「高収益チーム」が、
そんなに率先して負担を(単純に)増やす案を出すものだろうか、
・・・と、「低収益チーム」側が疑っても、おかしくないと思います。
だって、最初は、「高収益チームは10%、低収益チームは50%の負担」、
とか言っていたんですからね。
ここで、ちょっと大雑把な数字を例示して、仮定の話をしてみたいと思います。
例えば、「全広告収益の20%」を選手給与に回す、と決まっていたとします。
全広告収益を「16億ドル」(適当です)とすると、3億2000万ドルになりますね。
で、全チームが同じ額だけ負担するとすると、
「全広告収益の20%の1/32」が、各チームの負担額になりますので、
各チーム1000万ドルの負担となります。
ここで、「収益の少ない16チームは負担しなくてもよい」とすると、
残りの16チームは2000万ドルずつの負担となります。
更に、そのうち「下位8チームは1500万ドルずつでよい」とすると、
(これは、「全広告収益の30%の1/32」と言い換えられます)
「上位8チーム」は2500万ドルずつの負担となります。
更に、そのうち「下位4チームは2000万ドルずつでよい」とすると、
(これは、「全広告収益の40%の1/32」と言い換えられます)
「上位4チーム」は3000万ドルずつの負担となります。
(これは、「全広告収益の60%の1/32」と言い換えられます)
3000万×4+2000万×4+1500万×8+0×16=3億2000万
これで、「全広告収益の20%」を選手給与に回す、ということは実現できますね。
もちろん、広告収益の額は固定ではありませんので、
金額ではなく、「割合」で負担は決められるでしょう。
ですので、上記の「言い換えて」いる割合で見ていきます。
最も高収益のチームの負担割合は、「全広告収益の60%の1/32」ですね。
「60%」というと、大きな割合を負担しているように思えますが、
しかし、もし、このチームの広告収益が1億5000万ドルだったら、どうでしょうか。
3000万ドルは、20%にしか過ぎません。
要は、「全広告収益の60%」だろうとなんだろうと、
自分のところが、より多く稼いでいれば、何の問題もないわけです。
最初に「全広告収益は16億ドル」と仮定しましたが、
その中の1億5000万ドルをある1チームが占めている、ということは、
大いにあり得ることだと思います。
更に。
このチームが、今後、広告収益を大幅に増やす、なんらかのアテがあるとします。
例えば、倍増して、3億ドルの広告収益となるとしましょうか。
当然、負担額も増えますが、
もし、他のチームの広告収入が増えなかったとすると、
「全広告収益は17億5000万ドル」になりますので、
「全広告収益の60%の1/32」を計算しますと、3300万ドル弱。
自チームの広告収益に占める負担割合は、10%強に激減します。
・・・要は、そういうことです。
「高収益チーム」は、今後も広告収益を挙げるアテがある可能性が高いでしょうし、
「低収益チーム」は、アテがあるなら高収益になっているはずなので、無いのでしょう。
その「格差」は、今後も広がる可能性が高いのではないでしょうか。
その「格差」が広がれば広がるほど、「高収益チームに有利になる仕組み」が、
今、見てきた例になります。
もちろん、「低収益チームは負担しなくてよい」のであれば、そんなの関係ないのでは、
という話もありますが、そもそもその話にしたって、
「ずっと負担しなくてもよい」かどうかは分かりません。
「今年はゼロだけど、来年以降は広告収益が(ちょっとでも)増えたら割合を増やす」、
というようになっている可能性もあるのではないか、と思います。
そうなったら、得なのか損なのか、簡単には計算できない話になるのではないでしょうか。
何せ、自チームの収益が増えるかどうかだけではなく、
他チームの収益が増えるかどうかも関わってきますし。
更に言えば、これは「広告収入等」の部分についての話なわけですが、
従来のチケット収入等からの負担についても、
この「提案」の中で、何か言及があったかもしれません。
それらを45分で判断しろ、というのも無茶な話ですよねぇ。
・・・と、以上、「邪推」でした。
重ねて言っておきますが、決して「こんなような仕組みになった」という発表が、
あったわけではありませんので。
想像に想像を重ねた「妄想」です。
しかし、世間では、「ビルズとベンガルズだけが反対した」ということについて、
どう思われているんだろうなぁ。
今まで、どのオーナーが反対して交渉がまとまらなかったか、という情報が特に無かったのに、
急に「ビルズとベンガルズだけが反対」なんて情報が出てきたから、
「こいつらが、今回の混乱の原因か!」とか思われていたりして・・・。
そうだとすると、ちょっとかわいそうだなぁ。
結局、「声の小さいオーナー」は、「声の大きいオーナー」に振り回された、
・・・んじゃないかなぁ、と思う次第。(反対した2チームに限らず)
今後のニュースなどに注目していきたいところですね。