計算方法に至る考え方



パンターの新能力指標「パンターパワーヤード」についての第2回。
今回は、計算方法に至るまでの考え方などを。


前回書きましたように、パンターの能力は単純な飛距離では測れないのではないか、
ということで、如何に相手のオフェンスを奥から開始させることが出来るかを重視します。


タッチバックだと、相手陣20ヤード地点からの開始になってしまいますので、
そうならないよう、ゴールラインぎりぎりに落とすのがベスト。


ただし、もちろん、自陣奥深い位置から蹴った場合などは、
そもそもゴールラインまで飛ばすことなど望めませんから、
その場合は、出来る限り遠くに飛ばすこと、つまり、飛距離を重視する必要があります。


以上のことから、「良いパンター」というものを定義すると、
「深い位置からは遠くに飛ばすことが出来、
 浅い位置からは短くコントロールして飛ばすことが出来る」、
ということになるのではないかと考えます。


逆に、「悪いパンター」というのが、
「深い位置からは短くしか飛ばず、浅い位置からはタッチバック連発」、
ということになると考えた方が、分かりやすいかもしれません。


さて、そうなると、その「浅い位置」「深い位置」というのは、
一体、どの地点を境に分かれるのか、という話になります。


その地点を見つけ出すために、過去のデータを集計してみたのですが、
その際に、「特別NET平均距離」(自作)というものを計算してみました。


「NET平均距離」というのは、相手のリターン距離を差し引いた平均飛距離のことですが、
実は、タッチバックの際には、「距離」と「NET距離」は同じになっています。


しかし、よくよく考えてみると、「リターン距離を差し引く」というのは、
相手のオフェンスがどこから始まるのか、ということと近い意味合いがありますので、
タッチバック」は「20ヤードリターンされたこと」と同等とも考えられます。


そこで、タッチバックの際は20ヤードリターンされたこととみなして計算したのが、
「特別NET平均距離」となります。


また、それに対する値として、
タッチバックとならなかったものだけの「NET平均距離」も計算して、
それを「タッチバック以外NET平均距離」としました。


これが大体どんな感じの値になるか先に紹介しておきますと、
この「パンターパワーヤード」は昨シーズン中に作成していたので、
調べたのは、一昨年のデータになりますが、
このとき、パントは全部で2527回あり、うちタッチバックは227回、
「平均距離」は41.8ヤード、「NET平均距離」は37.3ヤード、
そして、「特別NET平均距離」は35.5ヤード、
タッチバック以外NET平均距離」は36.2ヤードとなりました。


パントリターンは平均で4.5ヤードくらい見込まれるけれども、
タッチバックの回を含まなければ平均5.6ヤードくらい、
タッチバックを20ヤードリターンしたものとみなせば平均6.3ヤードくらいになる、
・・・とでも読んでください。


さて、どうしてこんなものを計算してのかといいますと。


例えば、ある地点から蹴って15ヤード地点に落下するようなパントがあったとします。
そのときに、5ヤードリターンされたら、
相手のオフェンスは20ヤード地点から開始することになります。


これは、相手のオフェンスを奥から開始させることが出来るか、という観点で言いますと、
「0ヤード地点に落下してタッチバックになったこと」と、
同価値になるのではないかと考えました。


相手のリターン距離というのは、実はパント飛距離と密接な関係がありまして、
端的に言えば、「遠くに飛ばせば飛ばすほどリターン距離も長く」なります。


パントしたボールが落下するまでに味方がその地点にたどり着けなければ、
リターンを許してしまうことになりますからね。


そうすると、浅い位置から蹴った場合には、
相手に大きなリターンを許さないケースが多くなりますから、
タッチバックになるよりリターンさせたほうが絶対に良い、ということになります。


しかし、これが、だんだんと蹴る位置が遠くなっていきますと、
タッチバックになってもリターンのことを考えれば決してマイナスではない」、
という位置があるのではないか、と考えました。


要は、中途半端に蹴って20ヤード地点よりも手前までリターンされるよりは、
タッチバックにしたほうが良い、ということですね。
(もちろん、それだけ遠くに飛ばせるのであれば、ということになりますが)


具体的にどう調べたかと言いますと、
パントを蹴る位置によって5ヤード刻みで集計し、
「特別NET平均距離」と「タッチバック以外NET平均距離」が一致する地点を探す、
ということをやりました。


例えば、敵陣49〜45ヤード地点からのパントだと、
「特別NET平均距離」は32.1ヤード、「タッチバック以外NET平均距離」は33.4ヤード。
タッチバックさせないほうがパンターにとって良い、ということになっています。


これが、自陣36〜40ヤード地点からのパントだと、
「特別NET平均距離」は37.9ヤード、「タッチバック以外NET平均距離」は37.7ヤード。
この位置からなら、タッチバックはプラスに働いている、と考えられます。


・・・というように、5ヤード区切りで推移を調べてみた結果、
自陣41〜45ヤード地点から蹴った場合に、
「特別NET平均距離」は36.7ヤード、「タッチバック以外NET平均距離」も36.7ヤード。
ちょうど一致しておりました。


というわけで、この中間点である「自陣43ヤード地点」を、
「浅い位置」と「深い位置」の境目とみなすことにします。
この地点より深くから蹴った場合は、飛距離を重要視し、
この地点より浅くから蹴った場合は、落下地点を重要視する、ということです。


さて、次に。
落下地点の「価値」について考えてみることにします。


例えば、同じ「15ヤード地点に落下」でも、
先ほど書きましたように、遠くから蹴った場合にはそれなりのリターンが見込まれますので、
その分、価値は低くなることになります。


それが、どの程度のものなのかを調べるために、
先ほどと同じく、5ヤード刻みで、相手のリターン平均距離を調べてみました。
具体的には、「平均距離」から「タッチバック以外NET平均距離」を差し引いています。


すると、自陣41〜45ヤード地点から蹴った場合は約6ヤード(6.2ヤード)、
自陣46〜50ヤード地点から蹴った場合は約5ヤード(5.2ヤード)、
敵陣49〜45ヤード地点から蹴った場合は約4ヤード(3.8ヤード)、
敵陣44〜40ヤード地点から蹴った場合は約3ヤード(3.0ヤード)、
・・・というように、上手い具合に大体1ヤード刻みになっていました。


そこで、例えば、50ヤード地点から蹴って10ヤード地点に落下した場合と、
敵陣45ヤード地点から蹴って11ヤード地点に落下した場合は、
どちらも「15ヤード地点までリターンされることが見込まれる」ということになりますので、
これを「同価値」とするような計算にします。


逆に言えば、敵陣45ヤード地点から蹴って10ヤード地点に落下した場合は、
50ヤード地点から蹴って10ヤード地点に落下した場合よりも、
「1ヤード分だけ価値が高い」ということになります。


相対的な価値はそれで良いとして、では絶対的な価値はどう考えたかといいますと、
それは、タッチバックを基準に考えました。


タッチバックを「価値0」とします。
すると、「タッチバック」=「20ヤード地点までリターンされる見込み」ですから、
先ほどの「15ヤード地点までリターンされることが見込まれる」というケースは、
「価値5」ということになります。


その次の例の「45ヤード地点から蹴って10ヤード地点に落下した場合」は、
14ヤード地点までのリターンが見込まれますから、これは「価値6」。
「1ヤード分だけ価値が高い」ということに確かになっているかと思います。


さて、そうやって見ていきますと、先ほど求めた「分かれ目」である、
「自陣43ヤード地点」から蹴った場合、約6ヤードのリターンが見込まれますから、
14ヤード地点まで蹴った場合に「価値0」となります。


これを「飛距離」に換算しますと、43ヤード。
・・・なんか、意味ありげな数字が出てきました。


偶然には違いないのでしょうが、とりあえず、
パントにおいては「43ヤード」という数字が重要な数字となりそうですね。


で、先ほど書きましたとおり、これは「分かれ目」でして、
これより深い位置から蹴った場合には、飛距離をそのまま「価値」とします。


自陣43ヤード地点において、43ヤード飛ばした場合に「価値0」ですから、
これを基準とし、これより深い位置から蹴った場合には、
「飛距離−43ヤード」が、その「価値」となります。


例えば、自陣20ヤード地点から60ヤード飛ばした場合は、「価値17」です。


そういえば、先ほどの「落下地点重視」の場合(つまり浅い位置から蹴った場合)に、
最大どれだけの価値があるのかを見ていませんでしたが、
もちろん、落下地点が「1ヤード地点」である場合が最大になり、
「敵陣34ヤード地点より浅い位置」から蹴った場合に、「価値18」になります。
(指折り数えてみてください)


というわけで、これは遠い位置から61ヤード飛ばした場合と同等の価値になるわけです。
・・・我ながら、なかなか絶妙な「価値設定」だと思われますが、どうでしょうかね?


なお、もちろん、深い位置からでも、タッチバックになった場合には、
その分価値を減らす必要がありますので、
「自陣43ヤード地点から57ヤード飛ばしてタッチバックになった場合」を基準とし、
「飛距離−57ヤード」が、その場合の「価値」となります。


別の書き方をすると、「飛距離−43ヤード−14ヤード」になりますので、
その「14ヤード分」が、タッチバックで差し引かれる「価値」ということですね。


以上。
この「価値」を平均したものが、「パンターパワーヤード」ということになります。


・・・いかがだったでしょうか?


我ながら、相当ややこしてことになっているとは思っていますが、
ただ、筋は通っていると思いますし、出てきた値も、
それなりに納得できるのではないかと思っています。


この値を基準にして、今シーズンは、パンターを見ていきたいなぁ、と考えています。


本日は、こんなところで。