不運なキッカー



本日のキッカー紹介は、シカゴ・ベアーズキッカーの・・・、
・・・どっちにしましょう?


今のところ、まだ正キッカーは決まっていない模様。


現時点で、ベアーズのプレシーズンゲームは、
ホールオブフェイムゲームも合わせて、2試合が終了していますが、
(3試合目は、現地本日8月20日)
ダグ・ブライエンが、フィールドゴール1回、トライフォーポイントのキック4回、
ニック・ノヴァクが、フィールドゴール3回成功しており、
どちらも失敗はありません。


ノヴァクの方が、フィールドゴール成功回数が多いですが、
これは、「試している」という意味合いが強いのかなぁ、という気がします。
まあ、試すにしても、まだ距離は30ヤードまでしか挑戦していないのですが。


なんにせよ、ノヴァクは紹介できる内容が無い、ということと、
個人的にはブライエン希望、ということで。


改めまして、本日のキッカー紹介は、シカゴ・ベアーズKダグ・ブライエンです。


まあ、ブライエンは、この日記ではさんざん取り上げているのですが、
過去の経歴には触れていませんでした。
初めてこの日記に登場したときの題名が「さすらいのキッカー」だったのですが、
改めて経歴を見てみますと、その名にふさわしく(?)、さすらい続けております。


ブライエンは、1994年に、ドラフト3巡指名でサンフランシスコ・49ers入り。
その年から全16試合に出場し、そこそこの成績を残します。


ブライエン自身の成績は、あくまで「そこそこ」でしたが、チームは絶好調。
QBスティーヴ・ヤングに率いられた49ersは、
このシーズン、スーパーボウルを制覇します。
ブライエンは、ルーキーイヤーにスーパーボウルリングを手に入れるという幸運。


このスーパーボウルで、ブライエンは、
1試合7回トライフォーポイントのキック成功という、
スーパーボウルレコードを樹立しています。(現在も破られていません)


まあ、これは、立派といえば立派ですが、
褒めるべきは、7回もタッチダウンしたオフェンス力でしょうね。
冷静に考えて。


まあ、ともかく、前途洋洋。
・・・かと思われたのですが。


翌年は、6試合終了時点で、フィールドゴール成功率58.3%と散々な出来。
これで49ersに見限られたのか、
なんと、シーズン途中の10月に解雇されてしまいます。


ドラフト3巡という高順位で指名されながらのこの仕打ちは、
自らの成績が招いたものとはいえ、やや厳しく感じますねぇ。
もちろん、成績の数字だけでは見えない、
いろいろな事情があったのだとは思いますが。


思えば、ブライエンの苦労は、このときから始まっていたのかもしれません。


散々な成績だったとはいえ、もともと逸材だったからこそのドラフト3巡指名。
他のチームが放ってはおきません。
その月のうちに、ニューオリンズ・セインツと契約を結び、
シーズン残りの8試合に出場します。


ここで、なんとか成績を持ち直し(良くは無かったですが)、翌年も残留。
すると、翌年、1996年からは、人が変わったように活躍を始めます。
・・・と言いますか、もともとの本領を発揮しだした、と言うべきでしょうか。


中でも、1998年シーズンは、キャリア最高の成績。
フィールドゴール成功率90.9%という数字も素晴らしいですが、
50ヤード未満では、1度も外していないという素晴らしさ。
50ヤード以上も、6回中4回成功させているのですから、
ほぼパーフェクトな出来だったと言っても良いでしょう。


最長成功距離は56ヤード。
ここまで多くのキッカーの成績を見てきましたが、
どんなに良いキッカーでも、「55ヤード超え」というのが、
結構大きな壁になっているんですよね。
それを考えると、たとえ1ヤードでも、長い距離なのは素晴らしいです。


そんな活躍を残したセインツ時代でしたが、
2000年シーズンには、やや成績を落とし、
これで「下り坂」に入ったと判断されたのか、
シーズン終了後に解雇されることになります。


この年は、新たな契約チームがなかなか見つからず、
ようやくシーズン終盤の12月になって、インディアナポリス・コルツと契約。
ただ、既にコルツは、マイク・ヴァンダージャットが、
不動の正キッカーとなっておりましたので、
恐らく、キックオフ専門だったのだと思います。


しかしながら、1試合出場しただけで、解雇。
コルツは、この頃からキックオフキッカーに、
試行錯誤を繰り返していたのですね・・・。(今も続いています)


この後、すぐに、タンパベイ・バッカニアーズと契約。
この12月は、1ヶ月のうちに契約→解雇→契約と、
非常に慌しい月となりました。


バッカニアーズでは、残りの2試合に出場し、
6本中5本のフィールドゴールに成功。
まずまずと言って良いでしょう。


シーズン後、フリーエージェントになりますと、
今度は、ミネソタ・ヴァイキングスと契約を結びます。
が、この2002年シーズンは、膝の怪我でプレシーズンから調子が上がらず。


決定的なミスが起こったのは、シーズン2試合目のバッファロー・ビルズ戦。
フィールドゴールにも1回失敗しているのですが、
何より、トライフォーポイントのキックに2回も失敗。
この試合は、オーバータイムにもつれ込んだ末に敗れていますので、
その「1点」が非常に痛いものとなりました。


試合後、ブライエン自身が、
「高校生キッカーだってこんなことしない。解雇されてもしょうがない」
と語っていたそうです。
その後1ヶ月は、キックオフ専門でチームにとどまりましたが、
結局、10月になって解雇されることになりました。


常に「100%」を求められる、キッカーならではのエピソードといえ、
このポジションの厳しさを感じさせますね。


翌年、2003年に、ニューヨーク・ジェッツと契約。
以降2年間、悪くないどころか、結構良い成績を残します。


が、それも全て、昨シーズンのディビジョナルプレーオフの、
ピッツバーグ・スティーラーズ戦の終盤に、
決定的な勝ち越しフィールドゴールチャンスを2回も外したことで、
全てがおじゃんに。


そして、現在、新天地シカゴ・ベアーズで正キッカー争いをしています。


参考までに、キャリア通算の成績を書きますと、
フィールドゴール成功率81.1%、最長成功距離56ヤード、
トライフォーポイントのキックは成功率98.0%。


どれを取っても、決して悪いものではありません。
最初の方に書きましたが、もともと期待されてNFL入りしていて、
その期待どおりの成績を残している、と言っても良いと思います。


しかしながら、どうも、調子に激しい波があり、
悪いことに、最悪のタイミングで「調子が悪い」のが出てしまい、
自身の評価を下げてしまっている。


ブライエンには、そんな「不運」を感じます。


最近、「大ベテラン選手」の紹介が続いていますが、
ブライエンも、今年11月に35歳になる大ベテラン。


自身に降りかかる「不運」を、「実力」で吹き飛ばして、
是非、活躍を見せてもらいたいものです。