大事な場面に強いキッカー
本日のキッカー紹介は、ダラス・カウボーイズのKビリー・カンディフです。
カンディフは、2002年に、ドラフト外でカウボーイズに入団。
以降、2003年に1試合欠場した以外は全試合に出場を続け、
現在に至ります。
・・・ここのところ、大ベテラン選手の紹介が続いていたので、
なんだか、物足りない感じがしますが、経歴は以上です。
3年間のキャリア通算成績は、
フィールドゴール成功率74.3%、最長成功距離52ヤード、
トライフォーポイントのキックは1回失敗したのみ、となります。
あまり、パッとしないと言えば、パッとしないのですが、
実は、カンディフは、1つ「NFL記録」を持っています。
それは、2003年の第2週ニューヨーク・ジャイアンツ戦でのこと。
結果から言うと、この試合、
カウボーイズがオーバータイムの末、35対32で勝っています。
なかなか高得点ゲームとなったわけですが、
実はこの試合、カウボーイズは、タッチダウンは2つしか取っていません。
(ランでのタッチダウンと、インターセプトリターンタッチダウンが1つずつ)
タッチダウンのあとは、普通にトライフォーポイントのキックをしています。
ということは、どういうことか。
7点×2回=14点。
これがタッチダウンでの得点。
じゃあ、あとの「21点」は・・・?
もうお分かりかと思いますが、
この21点は、「3点×7回」、つまり、
フィールドゴールを7回成功させたことによるものなのです。
これは、かなり凄いです。
もちろん、フィールドゴール圏内まで進めることができるオフェンス力や、
なのにタッチダウンまでは結び付けられないという決定力の無さなどが、
要因としてはあるわけですが、
それでも、なかなか出来ることでは無いと思います。
比べるのもなんですが、
昨日シカゴ・ベアーズのKダグ・ブライエンのことを紹介したときに、
「1試合7回トライフォーポイントのキック成功」という、
スーパーボウル記録を持っている、と書きましたが、
同じ7回でも、フィールドゴール7回の方が、
はるかに価値があるものでしょう。(舞台に違いはありますが)
それだけでも素晴らしいのですが、内容を詳しく見ていくと、さらに凄いです。
この試合、試合時間をたった11秒だけ残した時点で、
ジャイアンツの当時のKマット・ブライアント(現タンパベイ・バッカニアーズ)が、
フィールドゴールを決めて、勝ち越しに成功。
29対32とします。
カウボーイズ、万事休す。
ここで、ブライアントのキックオフは、アウトオブバウンズに。
以前も書きましたが、この場合、自陣40ヤード地点から、
攻撃を開始することが出来ます。
とはいえ、たった11秒しかありません。
ここで、当時のカウボーイズQBクインシー・カーターが、
26ヤードのパスを見事成功。
敵陣34ヤード地点まで進みます。
が、残り4秒。
この時間では、どんなに急いでも、あと1プレーしか出来ません。
さて、よくフィールドゴールの成功距離を書いていたりしますが、
この「距離」というのは、ボールの置かれる地点のヤード数とは異なります。
まず、ゴールポストの立っている位置は、
ゴールライン(0ヤード地点)よりも10ヤード奥になります。
ですので、プラス10ヤードしなければなりません。
また、ボールの置かれた地点から直接蹴るわけではなく、
スナップされたボールを、後方でホールダーがキャッチし、
その場にボールをセットして、キッカーがキックします。
この、「ボールをセット」する位置が、あまり前過ぎると、
弾道が低いうちに、相手ディフェンスラインにボールを弾かれてしまったり、
下手したら、味方のオフェンスラインに当たってしまう、
なんてことも起こってしまうかもしれません。
ですので、ある程度、距離が必要になってきます。
その距離、約8ヤード。
つまり、まとめますと、ボールの「置かれている位置+18ヤード」が、
フィールドゴール距離に該当することになります。
例えば、「40ヤードのフィールドゴール成功」と言ったら、
敵陣22ヤード地点までボールを進めてあった、ということなんですね。
で、話を、先ほどの試合に戻しますが、
敵陣34ヤード地点というのは、フィールドゴール距離に換算すると、
「52ヤード」ということになります。
これは、いかにも微妙な距離。
実は、このときプロ2年目のカンディフは、
まだ1度も、50ヤード以上のフィールドゴールを成功させたことがなかったのです。
最後の1プレー。
フィールドゴールに賭けるか、それとも、ロングパスに賭けるか。
ここで、この年からカウボーイズのヘッドコーチとなったビル・パーセルズは、
「フィールドゴールに賭ける」を選択します。
そして・・・。
最初に結果を書きましたので、ご存知のとおり、
これが見事に決まり、オーバータイム突入。
カンディフは、見事、期待に応えました。
これが、この日6本目のフィールドゴール成功。
そして、7本目は、オーバータイムでの決勝フィールドゴール。
もう、この日の試合は、
カンディフのためにあったと言っても過言ではないでしょう。
実は、カンディフは、今年、制限付きフリーエージェントになっています。
そして、カウボーイズと再契約を結びました。
通算してみると、あまりパッとしない成績。
それでも再契約に至った訳は、
「あの日」の記憶が、あるからなのかもしれません。
大事な場面で、期待に応えることが出来る男。
今後、大舞台で、その真価を発揮する日が来るかもしれません。
その日を楽しみに待ちたいと思います。