「キッカーレーティング」のコンセプトと計算式



さて、先日より紹介しております、「キッカーレーティング」。
今日は、そのコンセプトと、計算方法を紹介したいと思います。


まずは、コンセプト。


キッカーの仕事は、大別すると、3つあります。
1つは、フィールドゴールのキック。
1つは、トライフォーポイントのキック。
もう1つは、キックオフのキック。


もちろん、どれも大事です。
が、「キッカーとして何が重要視されるか」と考えたときに、
まず、「キックオフのキック」の重要度が、やや下がると考えました。


もちろん、「キックオフのキック力が無い」ことを理由に、
キッカーとなれないケースもあります。
が、それは、「同じようなフィールドゴール成功率のキッカー同士」で比べた場合、
キックオフのキック力が無いほうが不利、というものだと思います。


まずキックオフのキック力の良し悪しで比べてみて、
同じくらいだったら、フィールドゴール成功率が良いほうを採用する、
・・・ということでは、決して無いということです。


また、「キックオフのキック力が無い」ということは、
「長い距離でのフィールドゴールを成功させることが出来ない」
ということにもつながります。
結局、これは、「フィールドゴールの力」で測れる能力だと判断しました。


次に、「トライフォーポイントのキック」についてですが、
これは、「確実に決めること」が求められる、
きわめて重要な仕事であると考えます。


しかしながら、以前も書きましたが、あまりにも成功率が高いので、
これを計算に組み込むと、外したときに影響力をとてつもなく大きくせねばならず、
それが、「フィールドゴールの成績」を、
全く無かったものとするくらい大きくなるものでしたので、
計算からは除外することにしました。


これも前に書きましたが、「トライフォーポイントのキックを外す」ということは、
「短い距離のフィールドゴールを確実に成功させることが出来ない」
ということにもつながります。
結局、これも、「フィールドゴールの力」で測れる能力だと判断しました。


というわけで、「キッカーレーティング」の計算の基とするのは、
フィールドゴールのキック」のみとしました。


さて、では、フィールドゴールのキックで求められる能力は何か。


これは、実は、先ほどから書いてきていたのですが、
「短い距離で確実に決められること」と、
「長い距離でも成功させることが出来ること」だと思います。


当たり前のことを言っているように思われるかもしれませんが、
書き方を変えて、
「短い距離では絶対に外さないこと」と、
「長い距離では外すことが多くても、成功させることも出来ること」とすると、
もうちょっと、意図が強まりますでしょうか。


「短い距離のフィールドゴール」に挑戦させるとき、
コーチは、確実に決めることを期待します。


例えば、3点差で負けていて残り時間も少ないときに、
敵陣残り10〜20ヤード地点あたりまで攻め進んでいたとします。
このときに、無理してパスでタッチダウンを狙いにいかずに、
確実なランを出して、あわよくばタッチダウン
そうならなければフィールドゴールで同点とすれば良い、
という作戦を取ることがあります。


これは、インターセプトされてしまうなどの「不測の事態」を避けるためですが、
この作戦が成り立つのは、
「この距離ならばフィールドゴールは確実に決まる」
という考えがあるからです。
フィールドゴールすらも「一か八か」になってしまうのであれば、
インターセプトを恐れるのは意味がありません。


ですので、「短い距離で確実に決められないキッカー」は、
チームの求めるキッカー像からは、程遠いことになります。


これが、「長い距離のフィールドゴール」に挑戦させるときは、
多少意味合いが違ってきます。


残り時間が少ないときには、それこそ「一か八か」で挑戦させ、
成功しなかった場合にはしょうがない、ということもあります。
(もちろん、ここで成功できれば、評価はぐっと高まるでしょう)


それよりも、残り時間の多いとき。
例えば、僅差で負けてはいるものの、残り時間がまだまだあるときに、
敵陣32ヤード地点(フィールドゴール距離50ヤード)まで進んで、
ここで、フォースダウンになってしまったとします。


ここでフィールドゴールに挑戦させ、成功すれば良いですが、
失敗すると、折り返しの相手の攻撃が、40ヤード地点からとなってしまい、
(ボールが最後に置かれた位置=8ヤード後方となるため)
非常に苦しい展開を余儀なくされます。
であれば、パントで奥に押し込めて、次の攻撃機会を待ったほうが無難です。


どんなに良いキッカーであっても、
「50ヤード以上の距離を確実に成功させることができる」キッカーは、
まず存在しません。


となると、このケースでフィールドゴールに挑戦させるかどうか、というのは、
もちろん、全体的な流れや、
オフェンス・ディフェンスの出来に左右されることもありますが、
結局、そのキッカーが「挑戦させるに足る」キッカーであるかどうか、
ということにかかってくると思います。


もちろん、もともとキック力が無いと分かっていれば、
絶対に挑戦させないでしょう。
コーチのキッカーに対する「長い距離での信頼性」が、
ここで表れてくるものと考えます。


だから、長い距離でのフィールドゴールは、成功率よりも、
「成功回数」が大きく影響すべきだと考えました。


以上より、計算に組み込む際には、まず、
「短い距離のフィールドゴールを失敗したときには大きなマイナス」
「長い距離のフィールドゴールを失敗したときには小さなマイナス」
ということを第1に念頭に置きました。


そして、成功したときにどう「プラス」するかも、当然距離によるのですが、
それは、「どれくらいの距離を成功すれば失敗のマイナス評価を取り消せるか」、
という観点で考えました。


その際、先日紹介した、「平均成功距離」「平均失敗距離」を取り入れ、
「43ヤードの失敗」=「35ヤードの成功」、
つまり、平均失敗距離である43ヤードで失敗したときには、
その後、平均成功距離である35ヤードで成功すれば、
先ほどの失敗は取り消せる、というようにしました。


もちろん、それより短い距離での失敗であれば、
より長い距離で成功しないと取り消せない、ということになります。


というわけで、計算式(手順)は、以下の形になります。


 ・「成功距離から18を引いた距離」(0〜42)の合計・・・(A)
 ・「60から失敗距離を引いた距離」(0〜42)の合計・・・(B)
 ・AからBを引いて「挑戦回数(成功回数+失敗回数)」で割る
 ・42で割って100を掛ける


補足すると、「0〜42」と書いてあるのは、
フィールドゴール距離」は、そのボール地点から18ヤードを足したものですので、
間違いなくその範囲の数字になる、ということです。
(ただし、60ヤード以上の挑戦は「60ヤード」とします)


最後に、「42で割って100を掛ける」とあるのは、
上の3つの段階では「−42〜42」の範囲の値となっているので、
分かりやすく「−100〜100」の範囲となるよう、調整しているだけです。


長々とした説明の割には、単純な式ですが、
説明してきた内容、つまり、「キッカーに求められるもの」は、
この式の中に凝縮されていると思います。


簡単に言えば、「B」で失敗距離に応じた「マイナス」度合いを表していて、
「A」で、その失敗を取り消していることになります。
「35ヤードの成功」と「43ヤードの失敗」を式に当てはめると、
結果がちょうど「0」になることがお分かりいただけるでしょう。


興味のある方は、実際に数字を当てはめて計算してみてください。