オフェンスラインスタッツの「弱点」



さて、昨日ちょっと書いた、オフェンスラインスタッツの「弱点」について。


前に「大雑把なイメージ」として書きましたが、「オフェンスラインポイント」は、
「ランブロッキングポイント」をベースとして、
「パスプロテクションポイント」と「ペナルティポイント」で調整を加えている、
というような成り立ちになっています。


実は、本当は、「ラン」と「パス」は同じ重要度で算出するのが理想でした。
ただ、「Play-by-Play」から読み取れるデータとして、
「パス」のときに、各オフェンスライン選手の「貢献度」を測れるものが、
何も無いんですよね。


例えば、昨日のセントルイス・ラムズインディアナポリス・コルツの試合。
ラムズLTオーランド・ペイスが、コルツのDEドワイト・フリーニーと渡り合って、
パスプロテクションを保たせている場面が何度かあったかと思います。


これでパスが成功した場面では、ペイスの貢献度は「大」と言えるはずですが、
そういうことは、実際の映像からしか判断できません。


また逆に、必死でペイスがプロテクションを保たせている「反対側」で、
ラムズRTアレックス・バーロンがミスをして、
クォーターバックサックをされてしまった場合。


この場合も、実際の映像を見れば、
誰が原因でサックされてしまったのかが分かるでしょうが、
記録上からは、それを読み取ることが出来ません。


結果として、パスの「成功」「失敗」は、
オフェンスライン選手全員の責任、という形になっています。


ただし、パスオフェンスにおいて、左右タックルは、
他の3人よりも責任が重い場面が多いため、
加点・減点するポイントも2倍となっています。


これだけだと、妥当性にかなり疑問符が付いてしまうわけですが、
オフェンスライン選手の能力」として考えた場合に、
「パスプロテクトが上手い選手はランブロックもそれなりに上手いはず」
という考えで、まずは様子を見てみよう、と思っていました。


結果、先日から書いていましたように、
「それなりに」妥当性があるように見えていたわけですが、
ペイスのデータを見て、それがちょっと崩れました。


というのも、どうもペイスは、データを見ると「ランブロックが下手」なのです。


例えば、第3週のテネシー・タイタンズ戦。
この試合は、ラムズが勝利しているのですが、
ランも、合計101ヤード出ています。


ところが、その内訳を見てみると、
中央から右のランは8回全てが「1ヤード以上ゲイン」していて、
ヤード合計としても、約4分の3の75ヤードが中央から右側のランですが、
左側のランは、11回中4回「ロス」しています。


前に、昨年のデータも掲載しましたが、
ランオフェンスで「ロス」する割合は、全体の1割弱でしたので、
これは、明らかに多いです。


こういったことが、この試合だけではなく、
ラムズの試合の全体的な傾向として見られ、
結果として、ペイスの「ランブロッキングポイント」は、
ラムズオフェンスライン選手中で最低のものとなっています。


そして、先ほども書きましたとおり、
「パスプロテクションポイント」は、チーム内ではほとんど変わりませんので、
結果として、ペイスは、ラムズオフェンスライン選手の中で、
「最も成績が悪い選手」となっています。
(反則も一番多いですが、これは五十歩百歩です)


ちなみに、昨シーズンのデータで算出もしてみましたが、
やはり、ペイスが「ラムズで最も成績が悪いオフェンスライン選手」となりました。
昨年まで6年連続でプロボウルに選出されている選手が、です。


結論として。


ペイスは、「パスプロテクション」でこそ能力を発揮する選手なのだと思います。
そして、そういった選手にとって、この「オフェンスラインポイント」では、
正しい評価が出来ているとは言いがたい、ということになりそうです。


現状、この点について、残念ながら改善案は思いついておりません。


とはいえ、この1点をもって、
「このスタッツは全く妥当性に欠ける」とは言いがたいのも事実です。


どうするか。


考え方として、例えば、ディフェンスライン選手のスタッツとして、
サック数」「タックル数」が重要視されていますが、
かといって、サック出来ないディフェンスライン選手は全くダメかというと、
オフェンスライン選手に上手く潰され」て、
他のディフェンス選手のアシストをすることで評価される選手も、
多くいたりするわけです。(こういう選手は、やはり目立たないですが)


この「オフェンスラインポイント」も、そのケースと同じで、
「重要なスタッツだけれども、それだけではない」と考えれば良いのか、
・・・というのが、現時点の見解です。


そして、そもそも「オフェンスライン選手に注目すること」が目的なので、
とりあえずはそれで十分、と考えています。


良い方法が見つかれば、改良を加えたいとは思いますが、
当面の間、この「オフェンスラインポイント」には、
そういった性質があるのだ、ということを認識しながら見ていきたいと思います。