サラリーキャップ制度の危機



スーパーボウル開始時刻まで、あと1日半を切りました。
いよいよですねぇ。


さて、先日話題にしました「ポール・タグリアブーコミッショナーの公式記者会見」が、
昨日、行われました。


・・・予想、大外れ。


「サプライズ」は何もありませんでした。
とりあえず、今年海外公式戦が行われる可能性は薄い、ということのようで。


・・・で、「アメリカンボウル」は・・・?


うーん、やっぱり、以前どこかで発表されていたのかなぁ。


 http://www.superbowl.com/features/live_events


公式記者会見のビデオは、こちらにあります。


そうそう、「メディアデー」のことを紹介したときには、
NFL.com」のトップページにビデオへのリンクがあったので、
特にビデオ掲載ページの紹介をしていなかったのですが、
もう、そのリンクは消えてしまってました。


上記URLのところに、「メディアデー」のビデオもありますので、
未見の方は、是非、見てみてください。(ちょっと長いですけど)


他にも、スーパーボウル出場両ヘッドコーチの公式記者会見の模様ですとか、
ウォルター・ペイトン・NFL・マン・オブ・ザ・イヤー」の発表の模様ですとか、
いろいろなビデオがあります。


これを書いている時点では、まだ発表されていないのですが、
もうすぐ、殿堂入り記者会見のビデオも載ると思います。


話していることが分からなくても、雰囲気を味わえて、なかなか楽しいです。


コミッショナー記者会見では、歴代のスーパーボウルMVP受賞者も参加していたりして、
そこもちょっと見所です。


ところで、この記者会見、全般的に「暗め」なイメージだったのですが、
話の中心は、「サラリーキャップ」についてでした。


実は、現在のNFL選手会の労使協定は、2007年シーズン終了後に切れるのですが、
その前に、2007年シーズンについては、サラリーキャップの規定がなく、
このままでは、サラリーキャップ無しでシーズンが行われることになってしまいます。


NFLとしては、この仕組みを継続したいため、選手会と交渉を続けていました。
ところが、その進捗が思わしくないようで。


コミッショナー記者会見の前日、選手会側から、
「このまま進捗が無いならば、法廷で解決せざるを得ない」、
というような声明が出されました。


それが、記者会見の「暗さ」につながっていたようです。


「対立の構図」は、どういうものかと簡単に書きますと。


まず、そもそも「サラリーキャップの仕組み」の部分なのですが、
1チームあたりの年俸総額は、いったいどういうふうに決まるのか。


これは、全試合のチケット収入やテレビ放映権料など、
NFLの主要収入のうち「65.5%」を32チームで等分した額、となっています。


現在NFLは、毎年収入を増やしており、この「1チームあたりの総額」も、
サラリーキャップが導入された1994年は3460万ドルだったのが、
2000年には6000万ドルを超え、
2005年は8550万ドル、と年々急激に増えてきています。


つまり、選手の年俸は、年々上がっています。


サラリーキャップ」と言うと、「選手の年俸の高騰を抑えるもの」というイメージですが、
もし、サラリーキャップがリーグの繁栄を築いてきたとすると、
そのイメージは、完全に間違っているものと言えると思います。


で、ここで選手会側が問題とするのは2点。


まずは、「65.5%」。
つまり、総収入のうち何パーセントを選手の年俸に使うのか、ということ。


実は、この割合も、ちょっとずつではありますが、増えてきています。
(2001年は「63.0%」で、以降、「64.25%」「64.75%」という感じで)


ただ、選手会側としては、「もっと割合を上げてもいいんじゃないか」という主張。


そして、もう1点は、「NFLの主要収入」について。


現在、プレシーズン・プレーオフを含む全試合のチケット収入や、
テレビ・ラジオの放映権料などが「主要収入」とされています。


ただし、「チケット収入」は一般席だけが対象となっており、
食事やなんかが付いてくる「豪華席」については対象となっていなかったりします。


つまり、その収入については、「チーム(オーナー)の儲け」になってきますので、
どんどん豪華席を作ろう、ということが各チームで結構進んでいたりします。


選手会側としては、「それでは、儲けはみんなで分け合おうという趣旨に反している」、
ということで、それらについても総収入に入れるべきだ、と主張。


結局、どちらにせよ、要約すれば、
「オーナーの個人的な儲け分を減らして、その分を選手に」、
という主張になるわけです。


先ほど、「NFL選手会との対立」というように書きましたが、
実際のところは、「オーナーと選手会の対立」になっているわけです。
(リーグは、その仲介をしているような感じ)


ニュースを読んでいると、リーグも選手会側も、
サラリーキャップが継続するのは良いことだ」と考えているように思います。


それによって、リーグに均衡が保たれ、結果面白い試合が提供されて、
人気が上がって、総収入額が増えて、そして選手の年俸も上がる、
・・・と、良いサイクルになっているからです。


しかし、実は、オーナーにとってみると、
サラリーキャップは必ずしも無くても良い」という部分があります。


というのも、サラリーキャップが無くなれば、
お金をかけるだけかければ強いチームが出来る・・・と思われるためです。


それに、収入を全チームで等分しなくても良くなれば、
「金持ちのチームはより金持ちに」ということになりますからね。


金持ちオーナーにとっては、そちらの方が好都合なわけです。


だから、選手会側が、「このままの状況だったら、現在の労使協定を破棄するぞ」と言っても、
オーナーにとってみたら、「やれるならやってみたら?」という感じなのです。


また、先ほど、選手会側も「サラリーキャップを歓迎している」というように書きましたが、
選手としても、実は、無くても構わない面はあります。
「短期的に」見れば、スター選手の年俸は一気に上がるでしょうし。


というわけで、この「オーナーと選手会の対立」。
物別れに終わって、サラリーキャップが無くなる可能性は、十分にあるわけです。


困るのは、リーグだけ。
だから、今、コミッショナーを初めとして、リーグが四苦八苦しているわけですね。


・・・と、まあ、そんなところが、「対立の構図」でしょう。


僕も、「サラリーキャップがリーグの繁栄をもたらした」と考える一人ですから、
こういう状況は、もどかしくてしょうがありません。


「この繁栄を手放してもいいのか!」と。


先ほど、「金持ちのチームはより金持ちに」と書きましたが、
逆に言えば、「貧乏チームはより貧乏に」なるわけですし、
チーム間の実力差も広がって、試合が面白くなくなる可能性が高くなると思います。


そんなことは、誰でも分かっていると思うのですが、
やはり、「有力(金持ち)オーナー」が、発言力など力を持っているわけで、
如何ともしがたい状況になっているのでしょう。


途中にも書きましたように、この10年でのリーグの「総収入」の上がり方は、
とんでもないものがありますが、
金持ちチームが「自分たちだけ強ければ良い」と考えていたら、
こんな繁栄を築けはしなかった・・・とは、考えられないのでしょうか。


オーナー側の譲歩を願いたいです。


これが、「選手会側の主張がエスカレートしないための駆け引き」、
としての対立だったら良いのですが・・・。


ちなみに、なぜ2007年のことが、今問題になっているのかと言いますと、
オーナー会議が3月に開かれるんですよね。


で、ここで物別れに終わってしまいますと、
来年の3月までは進展が無い可能性が高い、つまり、
来年のフリーエージェント契約はサラリーキャップ無しの状態で行われる、
ということになってしまう可能性が高くなるからです。


もちろん、今年、フリーエージェントになる選手にしても、
来年サラリーキャップが無くなるかどうかは、契約をする上で、
いろいろと影響が出てくるでしょうしね。


どうか、今年の3月中には、この問題が解決しますように・・・。