「パンターパワーヤード」の概要



パンターの新能力指標、「パンターパワーヤード」。


実は、既に昨シーズン中に作成してあって、
1度、日記でも触れたことがありました。


結局、機会が無くて、昨シーズンはそれ以上の紹介はしておりませんでしたが、
それを、ここで説明したいと思います。


本日は、まず、概要と作成意図から。


従来のパンタースタッツといえば、代表的なものは「平均距離」、
それから、「NET平均距離」があります。


前者は、単純なパント飛距離の平均ヤード。
後者は、そこから相手にリターンされた分を差し引いた平均ヤードです。


どちらが重視されるかは、考え方によってまちまちだと思いますが、
パンターの役割・目的は、ただ単に遠くに飛ばせば良いというわけではなく、
出来る限り奥の地点から相手のオフェンスを開始させることにあるわけで、
そういう意味では、「NET平均距離」が大事なように思われます。


なかなかスタッツとしては表しにくい「滞空時間」というのも、
長ければ長いほど相手がリターンしにくいのでしょうから、
それは「NET平均距離」に表れてくる、と考えられるわけです。


ただ、確かに滞空時間は相手のリターン距離に影響を与えますが、
一方で、「リターン距離」というのは、パンターの能力以外のものが関わる割合の方が、
圧倒的に大きいのではないか、という気がしています。


もちろん、どんなポジションのスタッツであっても、他の選手の影響を受けるものですが、
それにしても、この場合は、パンターの能力の関わる割合が少ないんじゃないかと。


更に、そもそも「飛距離」を単純に能力の指標とすることにも疑問がありまして。


例えば、敵陣45ヤード地点からパントを蹴る場合、
40ヤードのパントを蹴るパンターと、50ヤードのパントを蹴るパンターと、
どちらが「良いパンター」と言えるのか、ということを考えてみてください。


パントには、「タッチバック」というものがあります。
相手のエンドゾーンにボールが入ったら、
次のオフェンスは20ヤード地点から開始、というルールですね。


そうなると、タッチバックになってしまった場合には、
20ヤード地点までリターンされたことと同じ結果になるわけで、
これは、どう考えても、よろしくありません。


先ほどの例で言えば、敵陣45ヤード地点から40ヤードのパントを蹴れば、
敵陣5ヤード地点に落下します。
もちろん、実際にリターンの結果がどうなるかは分かりませんが、
平均的な「見込み」で言えば、大体10ヤード地点までリターンできれば良いところ。


そして、もう一方、敵陣45ヤード地点から50ヤードのパントを蹴った場合は、
これは、タッチバックです。


つまり、この場合は、「飛距離が長いほうがダメ」と言えるわけです。


もちろん、そういったことを考慮に入れるために、
スタッツには、「タッチバック回数」とか、「20ヤード以内回数」とかがありますが、
指標が増えれば、どう解釈していいのかが難しくなります。


「平均飛距離45ヤードだけどタッチバック5回・20ヤード以内20回」のパンターと、
「平均飛距離40ヤードだけどタッチバック0回・20ヤード以内30回」のパンターでは、
どっちが上か、って話ですね。


・・・分からないでしょう。


そしてもう1つ、「飛距離」に関しては問題がありまして。


先ほど同様、分かりやすい例を挙げますと、
自陣20ヤード地点から30ヤードのパントを蹴るパンターと、
敵陣35ヤード地点から30ヤードのパントを蹴るパンターと、
どちらが「良いパンター」と言えるでしょうか。
(ちなみに、「30ヤード」というのは、NFLのパント飛距離としてはかなり短いです)


前者は、ハーフラインまでしか到達しないわけですから、
「おいおい、もっと飛ばしてくれよ」と思うところ。


しかし、後者は、落下地点が敵陣5ヤード地点ですし、
30ヤードという距離なら、味方もボールが落下するまでにたどり着いているでしょうから、
恐らく相手もリターン出来ません。
結果、非常に「絶妙のパント」となる可能性が高いわけです。


しかし、どちらも飛距離は「30ヤード」。
「平均飛距離」では、差が出ません。


この「パント位置」の問題は、チームのオフェンスが良いか悪いかにも大きく影響され、
オフェンスがあまり良くないチームは、パントも自陣から蹴ることが多くなり、
結果、パンターとしては、「飛ばせるだけ飛ばせばよい」という形になるでしょう。


しかし、ある程度オフェンスが進むチームであれば、
パンターは、タッチバックのことも考えて、飛距離を調節する必要が出てきます。


結果、「オフェンスが悪いチームほどパンターの成績が良い」ということになりそうです。


これは、ちょっと納得できませんね。


・・・といった、これらの問題を解消するために考えたのが、
パンターパワーヤード」という指標になります。


まあ、能書きはこれくらいにして、実際どんな感じなのか、見てみましょう。
昨シーズンの成績です。

順位 パンター 平均距離 パンターパワーヤード
1位 ブライアン・ムーアマン(ビルズ) 45.7 4.0
1位 ハンター・スミス(コルツ) 44.3 4.0
3位 ジョシュ・ビドウェルバッカニアーズ 45.6 3.8
4位 シェイン・レクラー(レイダーズ) 45.7 3.6
5位 ミッチ・バーガー(セインツ) 43.2 3.4
6位 ジョシュ・ミラーペイトリオッツ 45.1 3.3
7位 ニック・ハリス(ライオンズ) 43.5 3.2
8位 トッド・サウワーブランブロンコス 43.8 3.1
9位 クリス・クラウ(バイキングス) 44.1 2.9
9位 マイケル・ケイネンファルコンズ 42.3 2.9
11位 マイク・シフレスチャージャーズ 43.7 2.7
11位 ドニー・ジョーンズドルフィンズ 43.5 2.7
13位 ベン・グレアム(ジェッツ) 43.7 2.4
14位 マット・マクブライアーカウボーイズ 42.5 2.1
14位 スコット・プレイヤーカーディナルズ 43.9 2.1
16位 クリス・ハンソンジャガーズ 42.9 1.9
16位 ジェイソン・ベイカー(パンサーズ) 42.7 1.9
16位 ブライアン・バーカーラムズ 42.7 1.9
16位 クリス・ガードッキスティーラーズ 41.8 1.9
20位 ジェフ・フィーグルズジャイアンツ) 42.1 1.8
21位 クレイグ・ヘントリックタイタンズ 43.2 1.7
22位 ダーク・ジョンソンイーグルス 41.4 1.5
23位 デイヴ・ザストゥディル(レイヴンズ) 43.5 1.3
24位 カイル・ラーソンベンガルズ 43.2 1.0
25位 ダスティン・コルキット(チーフス) 39.4 0.8
26位 トム・ルーインシーホークス 41.6 0.6
27位 デリック・フロストレッドスキンズ 40.4 0.5
28位 ブラッド・メイナード(ベアーズ) 41.0 0.1
29位 カイル・リチャードソン(ブラウンズ) 40.8 -0.2
29位 チャド・スタンリーテキサンズ 38.8 -0.2
31位 アンディ・リー49ers 41.6 -0.4
32位 B・J・サンダーパッカーズ 39.2 -1.9
33位 レジー・ホッジズイーグルス 37.4 -2.8



「平均距離」は参考までに公式スタッツのものを載せてみました。


どうでしょう?
まあ、なんとなく平均距離に比例しているような感じだけれども、
一概にそうとも言えない・・・というところで。


数字が小さいので、少し地味目な感じがしますが、大体、

  • 4.0以上  素晴らしい
  • 3.0〜3.9 なかなか良い
  • 2.0〜2.9 普通
  • 1.0〜1.9 良くない
  • 0.0〜0.9 悪い
  • マイナス 問題外

というところでしょうか。(通知表みたい?)


実は、この数字には、具体的な意味付けがありまして、それは、
「相手のオフェンスを20ヤード地点から何ヤード奥に押し込められるか」というもの。


つまり、相手のオフェンス開始位置の見込みとなっています。
(実際のリターン距離は計算には入っていませんが)


例えば「4.0」なら、平均で16ヤード地点からのオフェンス開始が見込めるわけですね。


極端な話で言えば、敵陣内から蹴って、全部タッチバックだったら、
この値は「0.0」となります。
(値がマイナスということは、「全部タッチバックの方がマシだよ」ということに)


もちろん、単純にオフェンス開始位置を平均しているわけではないですよ。
そんなことをしたら、遠くから蹴った場合に不利ですからね。


具体的にどんな計算をしているか、また、その根拠となる統計資料などは、
また次回以降に。


とりあえずは、「パンターパワーヤード」の、ざっとした紹介でした。