おめでとうございます!!
NFLスーパーボウル、NHKのBS1で放送された、
インディアナポリス・コルツ対シカゴ・ベアーズの試合の感想を。
おめでとうございます!!
もう、なんというか、他に言葉は無いですね。
コルツが勝って良かった。
QBペイトン・マニングがスーパーボウルMVPとなって良かった。
トニー・ダンジーヘッドコーチがスーパーボウル勝利ヘッドコーチとなって良かった。
僕としては、この試合を総括する言葉としては、
「ハッピーエンド」というものしか思い浮かばないです。
ようやく、ようやく、手に入れたスーパーボウル制覇の称号。
ダンジーの「苦労話」については、あちこちで書かれていますので、
ここでは、マニングに焦点を。
せっかくのスーパーボウルが雨になってしまった、ということで、
残念に思われている方が大多数だとは思いますが、
だからこそ、価値も増したし、意味もあるんだ、と感じています。
前日に、NHKのBS1で放送していた特番で、フローラン・ダバディさんが、
「このまま雨となって、マニングにはそれを乗り越えてもらいたい」、
ということを言われていました。
一般的に、「エリート」と言われ、順風満帆かのように思われるマニングですが、
注目されているからこそ、ここまでに乗り越えなければならなかった壁が、
山のようにあったことも事実でしょう。
今回のスーパーボウルも、対戦カードが決まった時点で、
「コルツが優位」と言われていました。
このまま「頂点」へ一直線と思われていたわけで、
いわば、「エリート」の道です。
ところが、マニングの選手生活がそうであるように、
この試合も、実際には「一直線」とはなりませんでした。
この2週間、当初、完全にコルツが優位と思われていたのが、
だんだんとベアーズ側に寄り始めていったのは、「反動」もあるでしょうが、
1番の理由は、試合当日の天気が分かり始めたことだと思います。
僕が見た限りでは、雨が降ってコルツが有利になる、というような論評は、
1つたりともありませんでした。
ドームを本拠地とするチームと、悪天候の屋外を本拠地とするチームの対戦だから、
ということもありますが、やはり、
雨ではコルツのパスオフェンスも鈍るだろう、
ということも、あったのではないでしょうか。
またも出てきた、「乗り越えるべき壁」。
そして、その壁を乗り越えて手に入れたスーパーボウルリング。
選手生活9年目にして、「ようやく」手に入れたスーパーボウルリングですが、
この「9年」という年月は、マニングにとって必要なものだったのでしょう。
ただ単に、最初から「エリート」だったから用意された道ではありません。
1年、1年、成長を重ねてきたからこそ。
1つ、1つ、壁を乗り越えてきたからこそ。
最後の「壁」も、もしかしたら、
1年前のマニングには乗り越えられなかったのではないでしょうか。
心から、お祝いを申し上げたいと思います。
改めまして、おめでとうございました!!
・・・と、まずは、そんなところで。
第15週のときに書いていた、
>次に褒めるときは、スーパーボウルを勝った後の予定です。
これが実現できて良かったです。
それにしても、今思い返すと、今シーズンのプレーオフは、
「コルツがスーパーボウルを制覇する」ためのストーリーが満載でしたねぇ。
ワイルドカードプレーオフの対戦相手カンザスシティ・チーフスは、
ハーマン・エドワーズヘッドコーチとの対戦で、
ダンジーとベアーズのラヴィ・スミスヘッドコーチとの「3人」のエピソードが出て、
それが最終的にスーパーボウルのストーリーにつながりました。
ディビジョナルプレーオフでは、かつてコルツがフランチャイズを置いていた、
ボルチモアに乗り込んでの、初のプレーオフでの対戦。
「コルツが光り輝いていたのはボルチモア時代」という過去を乗り越えました。
そして、あのAFCカンファレンスチャンピオンシップでの、
ニューイングランド・ペイトリオッツとの死闘。
ペイトリオッツが、コルツにとって「乗り越えるべき存在」であったことは、
改めて言うまでもありません。
これも、「ハッピーエンド」のストーリー。
余談ながら、今、昨シーズンのスーパーボウルの感想を見返してみたら、
そこにも「ハッピーエンド」という言葉がありました。
もちろん、どちらの「ハッピーエンド」も、「僕にとってのハッピーエンド」、
という意味でしかないですが、本当に個人的に、
こういうストーリーを描けるスーパーボウルは素晴らしいなぁ、と感慨深いですね。
さて、ざっと、試合を振り返ってみたいと思います。
まず、この試合の大きなポイントは、誰が見ても明らかで、
先ほども書いたように「雨になった」ということでしょう。
この天候は、ベアーズに有利に働くと考えられていました。
僕もそう考えましたし、実際、第1クォーターは、そうなっていたと思います。
ベアーズCBデヴィン・ヘスターのリターンタッチダウンも、もちろん、
「ベアーズのリターンチームの素晴らしさ」「ヘスターの速さ」、
そして、「コルツのカバーチームの酷さ」が、大きな理由なのでしょうが、
「大きなリターン」のみらず、タッチダウンまで許してしまったのは、
雨のせいでカバーチームがいつも以上に動けていなかった、
・・・という理由があったのではないでしょうか。
ディフェンスのミスから、タッチダウンパスを1つ許してしまいますが、
「6対14」の得点以上に、「ベアーズに勢いがある」と感じられた、
そんな第1クォーターでした。
では、結果として、なぜ、それなのにベアーズは勝てなかったのか。
僕は、その理由は、第1クォーター終盤に、
ベアーズRBセドリック・ベンソンが怪我をしたことだと考えています。
事前に、「ランオフェンスはベアーズの方が上」と書いていましたが、
それは、RBトーマス・ジョーンズだけではなく、ベンソンもいるからこそ。
ベンソンがいなくなってしまっては、
ベアーズのランオフェンスは「上」ではありません。
いや、この試合ではベンソンはファンブルしていたし、
この試合、ジョーンズはちゃんと112ヤード走っているし、
スタッツだけ見ると、別にランオフェンスに穴は無いじゃん、
・・・と思われるかもしれませんが、
ジョーンズの112ヤードのうち52ヤードは、「1回」で出たものであり、
それ以外では、60ヤードしか出ていません。
ジョーンズは、ベンソンに比べて、ビッグプレーが多いですが、
それは、ベンソンがコツコツと細かく走っている中でこそ生まれやすいもの。
ベンソンがいなくなって、ジョーンズが「コツコツ」と走らなければならない状況では、
体力的に辛くなってくるところです。
だから、どうしても、ランに比重を置くことが難しくなります。
実際、前半のスタッツを見ると、ベアーズはパスプレーよりランプレーの方が多いのに、
最終的には、パスプレーが圧倒的に多くなっています。
これは、「追いかける展開になった」という理由以上に、
ベンソンの不在が大きいのではないでしょうか。
ベアーズQBレックス・グロスマンが、ベアーズの「敗因」として挙げられがちですが、
「パスのパフォーマンス」としては、それなりによくやっていたと思います。
(投げるべきではないときに投げてしまうような判断ミスはありましたが)
インターセプト2つは、あの「時間帯」にパスをしなければならなかった、
ということが大きく影響しています。
第4クォーター序盤は、風も強くなっていて、
解説でも触れられていましたが、グロスマンだけでなく、
マニングのパスも、風に流されている様子が見られました。
そして、そのとき、フィールド(風)の向きが、
マニングには不利に働かず、グロスマンには不利に働いた。
2つのインターセプトは、そういうことでしょう。
ちなみに、今、改めて確認してみたら、
第1クォーター、マニングがインターセプトされたときの「向き」は、
画面右から左に進む向きで、グロスマンがインターセプトされた「向き」と同じでした。
フィールドの選択の重要性も、思い知らされますね。
とにかく、ベアーズは試合を通して、もっともっと、ランで攻めなければならなかった。
しかし、追いかける展開ではない時点も含め、それが出来なかったのは、
ジョーンズを使い続けることは出来なかったから。
すなわち、ベンソン不在の影響。
解説で、「ファーストダウンもセカンドダウンもランでいくのがベアーズのオフェンス」、
と言われていましたが、それは、やりたくても出来なかった、ということなのでしょう。
・・・以上が、「雨が降ったのにベアーズに有利に働かなかった」理由だと、
僕は考えております。
ついでながら書いておきますが、後から見直してみると、
グロスマンの2回のファンブルと1回のサックが原因で取られた得点は、
合わせて「3点」だけでした。
別に、僕はグロスマンを応援しているわけではないのですが、
「グロスマンさえ、ちゃんとしていれば、ベアーズが勝てた」というものではなかった、
ということは、強調しておきたいですね。
あんまり、グロスマン1人に責任を押し付けるのは、どうなんだろう、
・・・と、多少「天邪鬼心」も込めつつ。
事前に注目された、「コルツオフェンス対ベアーズディフェンス」も、
基本的にコルツ側が勝っていたわけですし。
それにしても、後半、グロスマンがパスでインターセプトを繰り返す様は、
ちょうど、NFCカンファレンスチャンピオンシップでベアーズと対戦した、
ニューオリンズ・セインツの姿を見ているかのようでしたねぇ。
ああいう展開になると、そうならざるを得ないんでしょう。
やっぱり、悪天候の中での基本は、コツコツしたランオフェンスを積み重ねられるかどうか、
ということにかかってくるんだなぁ、と改めて思うところ。
そういう意味では、コルツの2人のランニングバック、
RBジョセフ・アッダイとRBドミニク・ローズの働きは、素晴らしかったですね。
この試合、「全員を代表して」マニングがMVPを受賞しましたが、
それ以外にMVPが出るとしたら、「働きの大きさ」から言って、
このランニングバック陣から出るべきかな、と思いました。
そして、どちらかと言えば、アッダイかな、と。
ランでの獲得ヤード数ではローズが上ですし、タッチダウンもローズが挙げていますが、
アッダイも、ほとんど遜色ないラン成績を挙げていますし、
更に、それに加えて、パスレシーブ成績も抜群でしたから。
スタッツを見るだけでも、アッダイの「レシーブ10回」は目立ちますが、
実は、素晴らしいことに、「10回中10回成功」だったのです。
もちろん、安全な短いパスが多い位置にいるわけですが、
この激しい雨の中にあって、投げられたボールを1回も落としていないのは、
素晴らしいの一言でしょう。
ちなみに、これも、「警戒されて、しっかりカバーされているから」という注釈付きながら、
コルツWRマーヴィン・ハリソンは、11回中5回しかレシーブできていませんでした。
アッダイの果たした「役割」は、「29回143ヤード獲得」。
この日、誰よりも大きい役割を果たしています。
あとは、「1タッチダウン」でもあれば、実際にMVPだったかもしれませんね。
アッダイとしては、ちょっと運が悪かったかな。
・・・と、まあ、大体、「勝因」「敗因」は、そんなところで。
改めて冷静な目で見れば、点差以上に、コルツが圧倒していた内容だったと思います。
ただ、応援して見ていると、そうは思えないもので。
前半終了間際に、コルツKアダム・ヴィナティエリがフィールドゴール失敗したときには、
「得点しても、キックオフを蹴らなくてもよい、せっかくの機会だったのに・・・」と、
かなり、その後の試合展開が不安になりましたし、
その後、5点差の段階では、「タッチダウン1本で逆転される」と、
オフェンス時にもディフェンス時にもパント時にもドキドキしていましたし、
(どの段階でも、「タッチダウン」を取られる可能性はあるわけで)
残り時間が少なくなって、解説でも「もうコルツが勝ち」という雰囲気になっても、
「いやいや、まだ試合は終わっていない」と、気が抜けませんでした。
・・・どれだけ小心者なんだか・・・。
まあ、そんな中でも、ヴィナティエリが失敗したときには、
「うわぁ、まさか、また「自作自演」の展開になるんじゃないだろうな」、
・・・とか思ったりはしていましたが・・・。
あとは、細かいことをいくつか。
放送でも触れられていましたが、観客は、
圧倒的にベアーズファンが多かったですねぇ。
この理由なのですが、インディアナポリスもシカゴも、
会場のマイアミからの距離は同じくらいだから、なぜだろう、と思うところですが、
「人気」ではなく、単純に「人口」なんでしょうね。
インディアナポリスの人口は約80万人なのに対し、
シカゴの人口は約290万人。
・・・文字通り、桁が違います。
このあたり、この2週間の間に「ベアーズを応援する声」が大きくなってきた理由の、
1つだったりもするんでしょうねぇ。
全米見回したら、「シカゴ出身者」もかなり多そうです。
というわけで。
「補足」のときに、「一応、ベアーズがホームチーム扱い」と書いていましたが、
「一応」も何もなく、悪天候といい、コルツにとっては「アウェイの戦い」でした。
改めて、よく勝てたなぁ、と思います。
そうそう、「シカゴ出身者」といえば。
グロスマンが家族ぐるみでコルツファンだったことが紹介されていましたが、
そのグロスマンからインターセプトリターンタッチダウンを奪った、
コルツCBケルヴィン・ヘイドンは、シカゴの近くの出身のため、
家族ぐるみでベアーズファンだったそうです。
・・・皮肉というか、なんというか・・・。
あと、この試合、個人的に面白かったのは、第2クォーター、コルツが逆転した直後。
最初にトライフォーポイントのキックを失敗していたこともあって、
「3点差」とするためにツーポイントコンバージョンにいくか、
それとも、そのまま普通にキックするか、ということをサイドラインに確認するマニングが、
指を1本立て、2本立て、1本立て、2本立て、1本立て、2本立て・・・、
・・・と、延々と繰り返していた場面です。
いや、繰り返しすぎだし。
最初の映像では、途中でカメラが切り替わってましたが、
後から出てきた映像で見たら、少なくとも10回以上は繰り返してました。
ああ、そうか。
今、思いついたのですが、ダンジーが、見てなかったのかもしれませんね。
指を止めていると、それが「マニングの意思」であるかのように受け止められかねないので、
振り向くまで指の動きを止められなかったのかも。
最後は、諦めて両手を上げていたし。
・・・とか、どうでもいいことを考察したり。
あと、この試合で印象に残ったのは、
第3クォーター、コルツが敵陣ゴールライン近くまで攻め込んだときに、
「フィールドに12人いるんじゃないか」というチャレンジをしたことですね。
これは、ディフェンス選手が交代の途中だった、ということを狙ったチャレンジですが、
こういう、言ってみれば「せこい手」は、ダンジーのイメージじゃないところ。
マニングだったら、さもありなん、と言われるところですが。
そもそも、ダンジーといえば、2003年だったか2004年だったか、
それくらいまでは、「絶対にチャレンジをしない」ヘッドコーチだったんですよね。
しかし、「勝つためには、とにかく、出来ることをしなければ」ということで、
それ以降はチャレンジをするようになった、と聞いています。
ダンジーがコルツのヘッドコーチになって5年目。
最初のほうに、「マニングが1年1年成長してきた」ということを書きましたが、
その中には、当然、ダンジーから受けた影響も大きいものと思われます。
ただ、この試合のチャレンジのような姿勢を見ると、
きっと、ダンジーもマニングに影響を受けて変わっていったんだろうなぁ、とも思います。
それが上手く回っているからこその、この「スーパーボウル制覇」なんでしょうね。
最後に。
このスーパーボウルの感想を、ざっと見て回っていて感じたことが。
試合を「面白い」と思ったかどうかは、「詳しさ」に反比例しているのではないか、と。
確かに、悪天候だし、ミスが多くて、特別素晴らしいプレーも少なかったし、
NFLの試合を見慣れている人にとっては、つまらないものだったのでしょう。
ただ、一方で、その「ミスだらけ」の部分が、
スリリングに感じたのも確かでした。(特に第1クォーター)
アメフトは、悪天候でも中止にしないスポーツであり、
そもそも、その中で勝敗を競う、泥臭いものであったと考えると、
こういう試合こそが、「原点」の面白さを含んでいるものと言えるのかもしれません。
あまりアメフトに興味の無かった人が、この試合を見て「面白い」と思って、
今後、アメフトに興味を持っていってくれるのであれば、
注目の集まるスーパーボウルがこういう試合になって良かったなぁ、と思います。
以上、スーパーボウル、コルツ対ベアーズの試合の感想でした。