「補償ドラフト指名権」の考察(なのか?)
「補償ドラフト指名権」というものがあります。
ドラフト指名を見ていると、1巡・2巡は32チームなので「32位」までなのですが、
3巡目以降、なぜか「33位」以降があったり、
また、全体としても、「7巡×32チーム」なら「224人」で終わりのはずですが、
255人の選手がドラフトで指名されたりもしています。
これらは、「補償ドラフト指名権」によって発生するものなんですね。
昨年、この用語の説明を書いていたので、それを全文転載しますと、
>無制限フリーエージェント選手を多く他チームに流出してしまった場合に、
>リーグからその補償として受け取るドラフト指名権のこと。
>3巡から7巡の最後に付け加えられる。
>
>算定は、前年のフリーエージェントの移動状況が対象となる。
>
>基本的には、流出した人数から獲得した人数を引いた数だけ、
>ドラフト指名権がもらえることになっているが、
>その順位がどのように決まるのかは、公表されていない。
>
>算定の際、対象選手の契約内容や活躍度に基づいた計算がなされるため、
>流出した人数が多くない場合でも、指名権をもらえるケースがある。
>
>もちろん、獲得した人数のほうが多くても、指名権を奪われることはない。
>
>更に、これらの補償指名権が行き渡った後で、
>ドラフト指名順位や指名権数などを一定の計算式に当てはめ、
>7巡の最後いくつかの指名権が、いくつかのチームに割り当てられる。
>
>これは、指名順位上位のチームで、補償を受けていない、または、
>補償が少ないチームが対象になると思われるが、詳細は不明。
>
>なお、これらの補償で得た指名権は、トレードの対象とすることは出来ない。
・・・と、まあ、そんな感じです。
で。
今年も、その「補償ドラフト指名権」が発表されたのですが、
新たに気が付いたことがあったので、書き記しておきたいと思います。
まずは、昨年の「補償ドラフト指名権」の付与状況をご覧いただき、
上記の説明文の内容をご確認ください。
ざっと見てみると分かりますが、「何位」なのかはともかく、
基本的には、無制限フリーエージェント選手の「流出人数−獲得人数」の数だけ、
ドラフト指名権が与えられています。
例えば、インディアナポリス・コルツは「1人流出・獲得なし」だから「1つ」、
ピッツバーグ・スティーラーズは「4人流出・1人獲得」だから「3つ」、
・・・というように。
ただ、この中で「※注1」として書いてありますように、
単純な人数ではなく、契約内容や記録に基づいて計算されているため、
流出した選手が「良い選手」だった場合、
補償される内容も大きくなる、ということになります。
シアトル・シーホークスは流出・獲得が共に3人、
バッファロー・ビルズとワシントン・レッドスキンズは流出・獲得が共に2人ですが、
3チームとも、「1つ」ずつ付与されているのは、これに基づいたものですね。
更に、もう1つ、特殊なルールが。
7巡の最後いくつかの指名権、昨年で言えば全体251位から全体255位までは、
フリーエージェントの動向とは関係なく、
ドラフト指名順位と指名権数などを基に割り当てられています。
ヒューストン・テキサンズとニューオリンズ・セインツとグリーンベイ・パッカーズと、
サンフランシスコ・49ersとオークランド・レイダーズが、
流出・獲得人数とは関係なく、このルールに基づき、指名権を得ていました。
この5チームは、一昨年の成績下位チーム、つまり、
昨年のドラフトで指名順位が高かったチームですが、
その意味で言うと、セインツとパッカーズの間には、
テネシー・タイタンズとニューヨーク・ジェッツが入るはずです。
ただ、タイタンズは、フリーエージェントの「補償」で3つも指名権を得ていますし、
ジェッツも、「3巡33位」という、最も高い補償指名権を得ていますので、
そのあたりが考慮されて、飛ばされたのでしょう。
ちなみに。
この、最後の「補償」で得た全体252位の指名権を使ってセインツが指名したのが、
大活躍したWRマーケス・コルストンだったりします。
さて、そんなわけで、これで大体の「付与ルール」は分かりましたので、
それを踏まえまして、今年の「補償ドラフト指名権」を見てみましょう。
まあ、大体、先ほど見たルールどおりですね。
今年は、最初の「補償」が多くなっているので、7巡最後の「補償」の数が少なく、
オークランド・レイダーズの全体254位と、
デトロイト・ライオンズの全体255位の2つだけとなっています。
これは、今年のドラフト指名順上位2チームそのままですね。
2004年以降、ドラフトで指名されているのは常に「255人」なのですが、
この「全部で255人」というのは固定事項で、
それに合わせて、最後の「補償」の数も決まってくる、ということでしょう。
また、「※注1」適用の、流出・獲得人数が同じなのに付与されている例も少なく、
全体253位を付与されたシンシナティ・ベンガルズ(流出・獲得2人ずつ)だけです。
ということは、それだけ今年は、昨年に比べて、
「多く流出、少なく獲得」しているチームが多かった、ということなのでしょう。
その際たる例が、ニューイングランド・ペイトリオッツとボルチモア・レイヴンズで、
ここで、「新たな発見」がありました。
ペイトリオッツは、7人もの大量流出をしており、それに対して獲得したのは1人だけ。
レイヴンズも、6人流出で、獲得は1人に止まっています。
となると、ペイトリオッツに付与される補償指名権は「6つ」で、
レイヴンズに付与されるのは「5つ」ということに。
・・・なるかと思ったのですが、どちらも「4つ」ずつでした。
他の事例と合わせて考えてみると、どうやら、
「上限」が「4つ」と決まっているみたいですね。
まあ、もし、その通りに付与していたら、
7巡最後の「補償」をする前に、「全体256位」までいってしまうからなぁ。
そして、更に興味深いのは、その2チームに与えられたのは、
ペイトリオッツが5巡・6巡・6巡・7巡なのに対し、
レイヴンズが4巡・5巡・5巡・6巡と、明らかに良い内容。
1人1人の契約内容を知っているわけではないので、はっきりとは言えませんが、
どうも、「流出人数−獲得人数」の多さ自体は、
付与される指名順位に影響しないようですね。
そうなると、あんまり多く流出されると、それだけ損ということだから、
(今回で言えば、ペイトリオッツは2つ「流出損」)
流出し過ぎないように、フロントも気をつけないといけないわけで。
・・・といっても、「無制限フリーエージェント」だから、その操縦が難しく、
だからこその「補償」なんでしょうけども・・・。
そんなところが、ここ2年見てきて、分かったことでした。
しかし、当然、「多く獲得」しているチームは、補償指名権はもらえないわけですが、
意外と、昨年と今年、「もらえなかったチーム」は共通しているんですねぇ。
アリゾナ・カーディナルズ、カロライナ・パンサーズ、カンザスシティ・チーフス、
クリーブランド・ブラウンズ、シカゴ・ベアーズ、ダラス・カウボーイズ、
マイアミ・ドルフィンズ、ミネソタ・ヴァイキングス。
以上8チームは、昨年も今年も、1つも補償指名権をもらえていません。
もらえなかったのは、昨年13チーム、今年16チームなので、
そのうち共通するのが8チームというのは、割合的には多いのではないでしょうか。
さて、この8チーム、どういうところが「共通」するんでしょうかねぇ。
まず、無制限フリーエージェント選手を多く獲得している、もしくは、
流出した選手よりも「良い選手」を獲得している、ということは、
チーム力強化を果たしているチーム、ということになります。
(解雇・トレード・制限付きフリーエージェント等は含まないので、一概には言えませんが)
ただ、もし前年が「良い成績」だったのならば、
年俸の高騰で、必然的に「良い選手」が流出することになりますので、
そんなに「良い成績」でもなかったことになるのでしょう。
そして、逆に「酷い成績」だったチームにも最後の「補償」がありますから、
そんなに「酷い成績」でもなかったことに。
・・・「中堅の中の中堅」・・・?
そういう目で見てみると、まあ、確かに。
スーパーボウルに出場したベアーズは、今年は流出が多そうなので、
来年は補償指名権を得られそうですが、
なんか、他のチームは、来年も補償指名権をもらえないのかも・・・。
以上、この日記によくある、変な考察(?)でした。