「レシーバーレーティング」の補足解説



さて、反響が大きかった「レシーバーレーティング」についての第2回。


まあ、前回の最後にも書きましたように、
特にこれ以上解説することがあるわけでもないので、いくつかの補足などを。


まず、いろいろとご意見をいただきましたので、
そのうちのいくつかについて触れておきたいと思います。


「そもそもQBレーティングの計算自体が今の時代にそぐわないんじゃないか」、
というご意見があり、これがなかなか興味深い話で。


QBレーティングの計算には、
「パス成功率」「平均獲得ヤード」「タッチダウン率」「インターセプト率」、
という4項目が使用されているのですが、
このうち、パス成功率とインターセプト率については、
計算式が作成された30年以上前に比べて大きな改善が見られるのに対し、
平均獲得ヤードとタッチダウン率は改善が見られない、または悪化してるんですよね。


短いパスを多用する「ウエストコーストオフェンス」が登場したことなどが、
その主な要因だと考えられるのですが、
そうなると、そもそも4項目のバランスの上で成り立っていた計算が、
今は、パス成功率・インターセプト率が重視されすぎて、
平均獲得ヤード・タッチダウン率が軽視される形になってしまっている、と。


で、ならば、平均獲得ヤードとタッチダウン率について、
今の2倍の「価値」を与えてみたところ、勝敗との相関関係が増した、
・・・という、非常に面白い話でした。


これは、まさにその通りなんだと思います。


試しに、その方法で昨シーズンのQBレーティングを計算してみたところ、
シンシナティ・ベンガルズのQBカーソン・パーマーよりも、
ピッツバーグ・スティーラーズQBベン・ロスリスバーガーの方が上の成績になったり、
カロライナ・パンサーズのQBジェイク・デロームの評価が大きく上がったりと、
「感覚的」にも、なかなか納得の出来る結果が出てきました。


ただし、ランキングを全体的に眺めてみると、
そんなに大きく変化しているということはありませんでした。


レシーバーレーティング」についても、同様に計算しなおしてみましたが、
もちろん、全体的な順位の変動はクォーターバック以上にあったものの、
やっぱり1位は圧倒的大差でスティーラーズTEヒース・ミラーでしたし、
2位が元シアトル・シーホークスWRジョー・ジャーヴィシャス
3位がパンサーズWRスティーヴ・スミスというのも変わりませんでした。


まあ、ここからは個人的見解なんですけども。


今回、「レシーバーレーティング」に大きな反響があったのは、
「QBレーティングの計算式そのまま」という分かりやすさがあったためだと思うんですよね。


キッカーレーティング」とか「パンターパワーヤード」みたいに、
僕が理屈をこね回して作成したものではなく、
多くの人が知っている式をそのまま使用している、という。
クォーターバックと比較して考えられるのも、ピンときやすくていいですよね。
(自己否定みたいですが、あれはあれで良いところがあるし・・・と自己フォロー)


あ、いや、もちろん、レシーバーという目立つポジションを取り上げた、
ということも要因だとは思いますが。


もしかしたら、計算式をちょっと変えた方が「より良い指標」になるのかもしれませんが、
ランキング順位が全く違ってきてしまうような大きな変化があるわけではないですし、
下手に計算式に手を入れて分かりにくくするよりは、
これはこのまま、「QBレーティングの計算式そのままです」って形にしておこうかな、と。


とりあえずは、そんな風に考えています。


今後、シーズン中に取り上げるときも、
公式発表のQBレーティングと対比させて見ていくこともできそうですし。


「より良いクォーターバック評価方法は何なのか」というのは、
また別途、考えていきたいところですね。


次に、「ディフェンスパスインターフェアはパス成功と同じ扱いで良いんじゃないか」、
というご意見。
これも、なかなか面白い観点だと思いました。


が、コメント欄でも回答しましたが、僕の「反則」に対する考え方から、
あまり「反則(を引き起こしたこと)」を良い方向で評価はしたくないため、
やっぱり、計算には含めないことにしたいと思います。


ただ、面白かったので、昨シーズンの「ディフェンスパスインターフェアの実態」を、
ちょっと調べてみました。


昨シーズン、「適用された」ディフェンスパスインターフェアは、
全部で197回あり、総罰退ヤードは3547ヤード(1回平均約18ヤード)。


1回でもパスターゲットになった選手は全部で470人いたのですが、
(「パスターゲット」の回数は、反則で無効になったプレーは含まれません)
そのうち、108人がディフェンスパスインターフェアを「貰って」ました。


ディフェンスパスインターフェア「獲得ヤード」のベスト10は、以下のとおり。

順位 選手名 回数 ヤード レーティング 補正レーティング
1位 WR ドナルド・ドライヴァー
グリーンベイ・パッカーズ
6 175 66.2 71.6
2位 WR アマニ・トゥーマー
ニューヨーク・ジャイアンツ
4 146 77.4 82.9
3位 WR トリー・ホルト
セントルイス・ラムズ
4 145 89.2 92.6
4位 WR D・J・ハケット
シアトル・シーホークス
4 111 101.4 109.2
5位 WR プラクシコ・バレス
ニューヨーク・ジャイアンツ
6 109 60.1 63.5
6位 WR ムシン・ムハマド
シカゴ・ベアーズ
6 100 50.5 54.8
7位 WR ジミー・スミス
ジャクソンビル・ジャガーズ
5 92 89.9 92.5
8位 WR ロディ・ホワイト
アトランタ・ファルコンズ
2 90 53.8 59.9
9位 WR ブランドン・ロイド
サンフランシスコ・49ers
4 88 49.8 54.1
10位 WR アントワン・ランドルエル
ピッツバーグ・スティーラーズ
4 82 60.5 66.2



1位は6回175ヤードかぁ。
稼いでるなぁ。


レーティング」は元々の「レシーバーレーティング」で、
そこに、ディフェンスパスインターフェアの回数・ヤードを含めたものが、
補正レーティング」の値となります。
参考までに。


まあ、当たり前ですけども、みんな上昇してますねぇ。


全部調べてみたら、インディアナポリス・コルツTEダラス・クラーク1人だけ、
元の「レシーバーレーティング」よりも下がっておりましたが、
(ディフェンスパスインターフェアが1回3ヤードだけだったため)
後は、みんな横ばいか上昇でした。


面白いところでは、スティーラーズWRクインシー・モーガンが、
元々22回しかパスターゲットになっておらず、
獲得も9回150ヤードでしかないのですが、それとは別に、
4回75ヤードもディフェンスパスインターフェアで稼いでいるという・・・。


・・・これはこれで、チーム関係者からは評価されているんだろうなぁ。


と、まあ、そんなところで。
ご意見をいただいた皆様、ありがとうございました。


さて、ここからは、
レシーバーレーティングの見方」を、ちょっと研究したいと思います。


キッカーレーティング」の解説のときに触れたことがありましたが、
QBレーティングの値(シーズン通算値)には、概ね、次のような「目安」があります。

  • 80.0 NFLにおける平均レベル
  • 90.0 概ねリーグトップ10レベル
  • 100.0 超一流レベル
  • 110.0 歴代5位レベル



レシーバーレーティング」は、全く同じ計算式なので、
同じ「目安」で見てもよいと思われるところですが、
ただ、対象人数が多い分、また、「回数」がクォーターバックより少ない分、
上下への散らばり方が激しくなっています。


大体、昨シーズンのランキングを見ても、上位6人が「110.0」を超しているのに、
「歴代5位レベル」も何もあったもんじゃないだろう、ということもありますし。


というわけで、「レシーバーレーティングの目安」を考えたいと思います。


まず、「NFLにおける平均レベル」。
これは、「80.0」と全く同じで構いません。


まあ、そりゃ、そうですよね。
「上下に散らばりが大きく」なっていても、平均は変わらないですし。


ランキング表で見ても、対象選手の約半分が「80.0」以上となっております。


次に、「概ねリーグトップ10レベル」。
これが難しくて。


いや、単純にランキング表を見れば、106.0〜107.0とかそんなところなんですけども、
そもそも、対象の人数がクォーターバックに比べて約4倍もいるところに対して、
「トップ10レベル」という「ライン」を合わせるのは無理があるんじゃないのかなぁ、と。


試しに4倍して「トップ40レベル」と考えると、
これが見事に、「90.0」が目安となってきます。


ただ、まあ、「トップ40」と言われても、ややピンとこないのも事実で。


そこで、他に良い区切りはないか、ランキング表から探っていったところ、
「100.0」が「トップ20レベル」ということになりそうな感じがありました。
「トップ20」なら、それなりにピンときます。


というわけで、「100.0」を「概ねリーグトップ20レベル」としましょう。


次に、「超一流レベル」。
これも定義的には難しいところですが。


ちなみに、昨シーズン、QBレーティングが「100.0」を超えたのは2人だけでした。
それぐらいの「希少価値」があるところじゃないといけないですね。


なんとなく、ここまで「80.0」→「100.0」ときたので、
じゃあ次は「120.0」にしてみよう、とか考えてみました。


すると、これが当てはまるのは上位2人だけ。
「超一流」という名を冠するには、ちょうど良い感じがします。


「80.0」→「100.0」→「120.0」と、「目安」の並び方も分かりやすいですし。


すると、もう1段階上の「目安」である「歴代5位レベル」は、
その流れから「140.0」にすれば良いのか!?


・・・と思って見てみると、1位のスティーラーズTEヒース・ミラーが「139.8」で、
その見方を適用すると、「ほぼ歴代5位レベル」と言えるような位置づけ。


実際の「歴代5位」がどんな値になるのか、今のところ分からないのですが、
昨シーズンのランキング上での、ミラーの突出ぶりを見れば、
そうそうこんな高い値は出ないだろう、とは思われます。


ので、この見方は悪くないかな、と。


そんなわけで。

  • 80.0 NFLにおける平均レベル
  • 100.0 概ねリーグトップ20レベル
  • 120.0 超一流レベル
  • 140.0 歴代5位レベル



レシーバーレーティング」に対しては、こんな「目安」を提示しておきます。


今後、何シーズンか過ぎてデータが溜まってきたら、修正するかもしれませんが、
とりあえずは、こんな感じで見ていきましょう。


さて、最後に、せっかく「レシーブ成功率」なんてものを調べたので、
レシーブ成功率ベスト10を掲載しておきます。
(もちろん、パスターゲット回数48回以上の選手が対象)

順位 選手名 レーティング 対象回 成功回 成功率
1位 RB エジリン・ジェイムズ
インディアナポリス・コルツ
101.4 50 44 88.0
2位 RB クリス・ペリー
シンシナティ・ベンガルズ
96.5 62 51 82.3
3位 RB ドマニック・デイヴィス
ヒューストン・テキサンズ
106.3 48 39 81.3
4位 RB チェスター・テイラー
ボルチモア・レイヴンズ
88.2 52 41 78.9
5位 RB スティーヴン・ジャクソン
セントルイス・ラムズ
97.3 55 43 78.2
6位 RB ティキ・バーバー
ニューヨーク・ジャイアンツ
107.4 70 54 77.2
7位 TE エロン・キニー
テネシー・タイタンズ
106.4 72 55 76.4
8位 RB マーシャル・フォーク
セントルイス・ラムズ
92.0 58 44 75.9
9位 RB メウェルデ・ムーア
ミネソタ・ヴァイキングス
90.4 49 37 75.6
10位 TE ヒース・ミラー
ピッツバーグ・スティーラーズ
139.8 52 39 75.0



さすがに、ランニングバックばかりですが、
それにしても、ジェイムズは飛びぬけて凄いなぁ。


ちなみに、レーティングの計算式上、成功率が「77.5%」を超えると、
成功率分の値は満点(頭打ち)になってしまいます。
5人がそうなってますね。


以上、「レシーバーレーティング」の補足解説でした。


この指標も、これでしばらく置いておいて、
今後はまた、別のポジションについて取り上げていきたいと考えています。


本日は、こんなところで。